こんにちは、榊原です。今日は、本の紹介です。法月倫太郎さん著作の「法月倫太郎の冒険」をご紹介します。
ちょっと見て、ん!?と思った方もいるかと思います。この小説、著者と同名の素人探偵が出てきます。最近だと「全裸刑事チャーリー」の語り部が著者と同名の七尾さんですし、「メインテーマは殺人」のアンソニー・ホロヴィッツは同名の小説家として登場しますので、たまに見る演出ではあります。
ただ、著者と同名のキャラクターが狂言回しではなく、名探偵であるのは、ちょっと珍しいかもしれません。僕が推理小説をあまり読まないというのもあるかとは思いますが。
スッキリ読めるパズルミステリ
法月倫太郎の冒険
著者と同名の探偵
論理的解決の快楽
事件の特殊性
ストーリー
登場人物
熱量
おすすめ度
目次
法月倫太郎(のりづき りんたろう)シリーズについて
警視庁の父親を持つ小説家の法月倫太郎が、父親から持ち掛けられた相談等に乗る形で事件に関わり、解決していくスタイルが多い物語です。
「一の悲劇」「頼子のために」「法月倫太郎の功績」などが発刊されています。長編も短編もありますが、共通しているのは、いわゆる本格ミステリと言われるような、パズル型のロジックで事件を解決していくことです。
倫太郎は推理小説家ということで、ネタに詰まっている様子も描かれるのですが、父である警視に状況を聞かれた時に「ようやく一人死にました!」等のとのコミカルなやり取りでも楽しませてくれます。
死刑囚パズルについて
本作は、7つの短編から構成されていますが、今日ご紹介したかったのは、そのうちの一つである「死刑囚パズル」についてです。
この物語は、ある死刑囚が、死刑執行の直前に毒殺されるという、極めて不合理な殺人に対し、法月警視と倫太郎が調査に乗り出すというあらすじとなっています。
作品の魅力について
ミステリというのはジャンルであれば、探偵と共に事件を解決するという魅力があると思いますが、本作においてはそれが抜群に優れています。
読者は、事件解決のための手掛かりを全て探偵である倫太郎と共に確認し、何が重要であるかも倫太郎の口から告げられます。
容疑者全員の前で提示される犯人の絞り込みは、読者が見た手掛かりを論理的に使って処理していきます。この絞り込みが、こちらでもわかる理屈でやってくれるのがとても気持ちいいのです。
この、「読者が分かる理屈」を絶妙なバランスであることが、本作の最大の魅力であり、皆さんに味わってもらいたいところなのです。
また、民間の捜査協力者ということで、倫太郎を見る刑務所長などの目は厳しいのですが、倫太郎の推理が的中を始めると、段々と見る目が変わってくるのも、お約束を押さえてくれていて楽しませてくれます。
最終的に明かされる回答は、「ああ、それで」と手を打ち、読後感もスッキリしています。この短編は、一番最初に掲載されているのですが、残念ながら(?)これを上回る知的な面白さの作品は、この本にはありませんでした(衝撃度であれば2つ目の「黒衣の家」の方が勝っていると思いますが)。
最後に
法月倫太郎シリーズは、あまり読後感が良くない物語もありますが、本作はスッキリ楽しく読める名短編だと思います。
概ね100頁くらいでサクッと読めますので、是非図書館などでもお読みいただければ嬉しいです。