こんにちは、榊原です。今日は、書籍の紹介です。七尾与史さん著作の「全裸刑事 チャーリー」の紹介です。本作のネタバレはありませんが、2014年に刊行された「○○○○○○○○殺人事件」についてのネタバレがありますので、ご注意ください。
目次
著者 七尾与史さんについて
デビュー作「死亡フラグが立ちました」から始まり、「ドS刑事」、「偶然屋」などが有名なミステリー作家の方です。
僕が読んだのは上記の作品と本作のみですが、多くの著作が一人称かつ短めの文体で構成されているため、サクサク読めます。
アイディアとインパクト重視の作家さんのようで、著書の多くは一癖も二癖もある設定や登場人物ばかり。
例えば、ドS刑事は主人公格のキャラクターが「死体を見たいから刑事になった」と公言し、偶然屋では、偶然を演出する便利屋たちが織り成す物語が描かれます。
本作の設定と構成について
本作の設定は、タイトルの「全裸刑事チャーリー」と序文の「ヌーディスト法が施行されて一年が経つ」という一文で説明が完了しています。後は、ひたすら全裸の刑事チャーリーと相棒の七尾(自身の名前をこの作品につけるというプロ意識の高さには冗談抜きで感服します)が事件を解決するのみです。
この作品は、「10分間ミステリー」などのショートショートに掲載されていた作品のようで、長編の書下ろしではありません。
15の短編となっていますが、一つ一つが「恐怖の全裸車両」「戦慄!股間認証殺人事件」など正気を疑うタイトルで構成されています。
ストーリーについて
タイトルと設定で出オチかと思いきや、次から次へと珍奇な名前の容疑者、店、ガジェットなどが登場します。
強裸温泉の名物「ふりちん饅頭」、指紋ならぬ局部で特定する「チン紋」、被害者「丸尻立郎(まるじり たつろう)」など、よくもまぁと感心するほど局部等に絡めた名前が次から次へと出てきます。
このいい意味で(?)トチ狂った世界観とネーミングセンスが今作の最大のセールスポイントです。ついてこれるもんならついてきやがれという作者からの謎の気迫を感じます。
正直なところ、僕はそこまでこの作品が好きにはなれませんでしたが、読んでいる最中に気が狂いそうになるという稀有な体験ができたことは間違いありません。この調子で長編を書かれていたら、本当に気が狂っていたと思います。
キャラクターについて
キャラクターは、ほぼチャーリーと七尾、後はゲストとしての犯人のみでほぼ構成されています。ここは、短くまとめなければならないため、登場人物を絞ったのでしょう。
キャラクターで一番気になったのは、「世界一パンツを脱がない男の秘密」に登場する「フィッツジェラルド」という名前です。この名前、「偉大なるギャツビー」で有名な作家と同名なのですが、何か関係があるのでしょうか?意図してつけていない可能性も高いですが……。
最後に
○○○○○○○○殺人事件は、主人公たちがヌーディストで、事件の舞台である無人島では全員裸だったというじつに馬鹿馬鹿しい(誉め言葉です)叙述トリックでしたが、素っ裸であることを前面に押し出した狂気の作品が出版されてしまいました。
手放しに人にお勧めできる作品ではありませんが、読書中に気が狂いそうになる唯一無二の体験をできますので、深淵を覗いてみてはいかがでしょうか。
深淵に覗き返されても責任はとれませんが……。そういう意味では、現代版ドグラ・マグラとも……いえるの、でしょうか?
それでは、また!