こんにちは、榊原です。今日は、本の紹介です。珪素さん著作の「異修羅Ⅱ 殺界微塵嵐」をご紹介します。
目次
~あらすじ~
リチア新帝国の動乱は終わったが終わった後、「微塵嵐」の噂が流れ始めた。丘を、動物を、人を、一切合切容赦なく砂の塊にする災厄。
国は、腕の立つ者を雇い、対処しようとするが……という感じです。
ストーリー
全体の感想
今回は、勇者を決めるために開催される参加者の招集と並行して、突如現れた災厄である微塵嵐への対処を主軸として物語が進みます。
前巻に引き続き、新たな修羅たちが現れ、人知を超えた能力を惜しみなく披露してくれるので、否が応でも胸が熱くなること請け合いです。
良いところについて
①個性的なキャラクターについて
本作から登場するのは様々な魔剣を使用するドワーフ、進化を繰り返すゴーレム、己の強さに対抗できるものがいないことに失望する竜など、相変わらず特濃の個性持ちがごろごろ出てきますので、飽きることはありません。
それぞれの視点から自分の背景、能力、人生観について言及があるため、そのキャラクターの概ねの性格は掴めると思います。
②緊張感のある描写について
一歩対応を過てば、即座に死につながる緊張感ある戦闘が熱いです。特に本作では、砂漠に現れた怪物とメステルエクシル、トロアの三つ巴の戦闘で、一方に集中すればもう片方から叩かれるというジレンマが巧く描写されていると思います。
また、能力のぶつけ合いが見所の本作ですが、相手の予想を上回るための駆け引きもなかなか面白いです。本作では「絶対なるロスクレイ」の戦闘手段が個人的にツボでした。
今一つだったところについて
①視点の切り替えについて
前回も書いた点ですが、各陣営のエピソードをそれぞれ書いていくため、この2巻だけでも10回以上視点が切り替わるので、感情移入する頃には別の物語になってしまいます。
おそらくは、この小説がウェブサイト元々「小説家になろう」からの物で、各章ごとに視点を切り替えているため、本として読むことを考慮していない造りなのではないかと思います。
キャラクターが絞り込まれるであろう4巻や5巻になるころにはもう少し落ち着くかもしれませんが、3巻で改善はされていないかもしれません。
②テンポについて
2巻終了時点で、16名現れるという修羅の11名しか明かされていないため、3巻も半分程度はキャラ紹介になる予感がします。
本物の勇者を決めるために、腕に覚えのある者が競い合うという設定が前巻の最後で明かされてからあまり物語が進んでいないような……。この「殺界微塵嵐」編は前巻から趣向を変えたキャラ紹介の域を出ていませんし。
勇者や本物の魔王が存在したはずなのに、誰も具体的に知らないという本作の核心にはいつ迫れるのか……。とりあえず、次回も期待して読みます。読んでいるときは面白いんですけど、読み終わると「あれ?あんまり進んでなくね?」ってなるんですよね、この小説。
主要登場人物についての雑感
地平砲メレ:巨人。巨体から放たれる強弓は、長い時を費やした修練により、必殺の威力と命中力を誇る。
気のいいオジサンではありますが、他の修羅に比べるとちょっと薄味です。長い時間をかけて弓の命中精度を上げたり、長命であるが故の孤独など、面白い要素もありますが、これ以上掘り下げようがあるのかというところが不安。
戒心のクウロ:小人。天眼という異能を持っているが、失いつつある。
天眼は、周囲のことを把握する能力なので斥候にはもってこいだとは思いますが、戦闘面に活用できるのでしょうか?
この人も16人の内の一人に数えられていますが、前巻に登場したソウジロウなどと対決した日には、文字通り瞬殺されそうな勢いです。
おぞましきトロア:所持する魔剣の力を引き出す能力を持つドワーフ。
二つ名に「おぞましき」とつけられるのは、何かの嫌がらせのような気がしないでもないです。名乗るとき結構恥ずかしい。
「神剣メテルク」「凶剣セルフェスク」「ムスハインの風の魔剣」など香ばしい名前の剣を入れ代わり立ち代わり使用するのは、やたらカッコいいです。父を継ぐために戦うという背景事情も胸熱なので、しばらく生きていて欲しいです。
窮知の箱のメステルエクシル:ゴーレム。無限に再生し、蘇る度に自身の死因を克服する。
あんまり知性があるものとして描かれていないため、感情移入は難しいです。トロアと激突するのですが、背景が描かれているトロアの方に感情移入してしまいます。能力をみても、今一つピンときませんでした。
軸のキャズナ:魔王自称者であり、メステルエクシルの開発者
啖呵の切り方がやたらカッコいいです。イメージは、「天空の城ラピュタ」のドーラ婆さん。メステルエクシルに攻撃手段の指示をしますが、戦闘面では、はっきり言ってお荷物気味です(広範囲の攻撃が巻き添えを恐れてできなくなるため)。
「誇りを通すための戦いをしたのは、常に誇るべき己であるためだからだ」という一文にこの人の全てが集中されている感じがして好きです。
最後に
特濃の個性持ちたちがぶつかり合う迫力満点の戦闘は健在です。視点をガチャガチャ切り替えるのが難点ですが、次回にも期待を持てるクオリティーでした。3巻も継続して楽しませてもらおうと思います。
それでは、また!