こんにちは、榊原です。今日は、ミュージカルの紹介です。帝国劇場で鑑賞した「マイ・フェア・レディ」についてご紹介します。
目次
マイ・フェア・レディとは?
下町の訛りが酷い少女「イライザ」と、音声学者「ヒギンズ教授」がふとしたことから出会い、ヒギンズがイライザを社交界でも通用するレディとして教育する物語です。
元々は舞台劇ですが、オードリー・ヘップバーンが主演の映画が超有名なので、そちらで知っているという方が多いのではないでしょうか。
キャストについて
このミュージカル、主演メンバーはダブルキャスト、つまり、日によって代わります。イライザは朝夏まなとさんと神田沙也加さん、ヒギンズ教授は別所哲也さんと寺脇康文さんです。
僕は、「アナと雪の女王」の吹き替えで神田さんの声が印象に残っていたので、そちらの方を見てきました。コロナも落ち着いたからか、客席は満席。男女比は男1:女9くらいで居心地は凄く悪かったです(笑)。
ストーリーについて
あらすじについては、こちらでご覧ください。第一幕は、イライザとヒギンズ教授との出会い、特訓、競馬場へまで、第二幕は、競馬場での失敗、舞踏会での成功、ヒギンズ邸での衝突、イライザの孤独、二人の決別、そしてエンディングです。
反発し合っていた二人が、一つの物事に取り組むうちに惹かれていって……という王道のコメディです。イライザは最初、ドラゴンボールの悟空ばりの訛りですが、ヒギンズ教授の超スパルタによって改善されていきます。
このスパルタ振りが、ビー玉を含ませて喋らせるとか、ろうそくの火を消すように喋るとか、映画「英国王のスピーチ」でも似たようなことをやっていた気がします。結構メジャーな発声の訓練方法なのかもしれません。
イライザの改善ぶりが凄まじいので、「おいおい」と突っ込みたくはなりますが、嬉しそうなイライザが、超かわいいので、何かどうでもよくなります。
キャラクターについて
約3時間ほどで語られるのは、ヒロイン兼主役のイライザ、ヒギンズ、ピッカリング大佐なのですが、物語内で成長するのは、イライザとイライザの父「アルフレッド」だけです。
イライザについて
イライザは、訛りが多くては、店員として雇ってもらえないということでヒギンズに教えを請うのですが、話法やマナーを習得した後で、今後の自分に対して不安を覚え、それを理解しようとしないヒギンズに愛想が尽き、ヒギンズ邸を出ていきます。
この不安と孤独が、物語のキーポイントであり、非常に引き付けられる描かれ方をしていると思います。自分を必要としなくなった父親、自分の変わりようにイライザを認識できない友人。
そうなると、イライザが孤独を埋めるためには、盲目的にアプローチしてくるボンボンのフレディと傲慢でイライザ(というか他人全般)を理解しないヒギンズの2択しかないという地獄。
エンディングで、録音した音声を停止したイライザに対して、ヒギンズが「スリッパはどこだ?」と聞いたところで、ブチ切れるのかと思いきや、何故か二人でソファーに座ってハッピーエンド。本当に意味が分からない。
そもそもイライザが出て行ったのは、上流階級の人間として振る舞うという難局を乗り切ったのに、何一つ労おうとしないヒギンズに腹が立ったからのはずです。しかも、それはヒギンズが、全くイライザに配慮をせずスリッパについて話したことも要因の一つなんですよ。
この人たちは本当にこれからやっていけるのかと非常に不安になりましたが、幸せそうな感じなので、良しとしましょう!
アルフレッドについて
アルフレッドは、あまり登場シーンがないのですが、イライザを除けば、この人物が最も状況が変わります。
アルフレッドは、その日の酒代をイライザにせびり、イライザを自宅に住まわせて教育するヒギンズに金を請求する真正のkuzuです。しかし、ヒギンズの計らいから始まったマナー講師から、継続的な遺産を受け取ることになり、お金の心配がなくなります。
金が入り、更に結婚も決まって喜びそうなものですが、アルフレッドはあまり幸せそうではなく、諦観を漂わせて「時間通りに教会へ」を歌い上げます。
これ、もう自由に生きていた時代は終わり。パーティーは終わりなのだということがひしひしと感じられます。結婚式の参列を断り、「さようなら」という言葉と共に去るイライザも合わせて、非常にいいシーンだと思います。
ヒギンズについて
ヒギンズは、最初からイライザを自分と対等の人間として扱わず、それは最後まで一貫し、実の母親ですら呆れてしまうのですが、彼は全く変わろうとしません。
女性が9割を占める帝国劇場において、「女ってやつは、癇癪を起すし、役に立たない」というようなことを朗々と歌い上げ、それを反省するシーンも一切ないので、結構ギリギリのキャラクター、というかアウトだなぁと思いました。
サラリとネットで評判を調べてみましたが、さもありなんと言うべきか、中々に女性からは評判が悪いようです。
音楽について
本作の最大の魅力です。「じっとしていられない」が最も人気があるらしいですが、僕としては「だったらいいな」の方が、夢見るイライザの魅力が溢れていて良かったと思います。
ついでに言うと、前者の歌は、このすぐ後で描かれる競馬場で、イライザは盛大に失敗してしまうので、翻って微妙になってしまいました。物語の造り上、一回は成功させてイライザを増長させてからの失敗がいいと思うんですけど。
イライザ、ヒギンズ、トム、アルフレッドは自身をテーマにした歌が用意されているのですが、ヒギンズは徹底して人(主に女性)を見下しまくった歌が多く、一貫していて笑えます。
最後の曲は、決別したイライザを惜しむ「忘れられない君の顔」なのですが、ラストはもう少し気持ちが上がる歌で閉めて欲しかったように思います。
最後に
いろいろ書きましたが、神田さん演じるイライザが、正気を失いそうになる程可愛い歌声で魅力的に演じてくれるので、何もかもどうでもよくなります。
誰とでもいっしょに見れますし、楽しいシーンも多いので、機会があれば、ぜひご覧ください。東京公演は終わってしまいますが、今後は名古屋の方でやるようです。
それでは、また!
追記
2021年12月19日、本作でイライザを演じていた神田さんがご逝去されました。カーテンコールの後、「見終わったから、さぁ、帰ろう!ではなく、整列してお帰りくださいね」と元気に締めくくっていたことをよく覚えています。
とても実力のある方でしたので、もう見ることはできないんだなと思うと、残念でなりません。安らかにお休みいただきたいと思います。