こんにちは、榊原です。今日は、マンガの紹介です。月間コミックバンチで連載されている「応天の門」についてご紹介します。
一風変わった探偵マンガで、笑いあり、情緒あり、バディ感ありのしっとりとした空気が魅力です。以下、魅力などについてご紹介します。
目次
あらすじ(wikipediaより)
藤原氏が朝廷の実権を掌握しつつあった時代。平安京の貴族たちの間では、その藤原氏の屋敷から夜な夜な下女が行方不明になるという事件の噂で持ちきりとなっていた。貴族たちは「鬼の仕業」と言い出し、その噂は帝の耳にも届くようになった。
都の守護を務める在原業平は、帝の命を受け犯人捜しを始めるが、下女誘拐の犯人として自身の縁者である紀長谷雄が捕縛されてしまう。長谷雄の無実を証明しようとする業平は、捕縛の場に居合わせた長谷雄の学友・菅原道真に協力を依頼し、不承不承協力を約束した道真と共に犯人捜しを続けることになった。
捜査の甲斐あって下女の行方不明事件を解決した業平と道真は、以降も都で起こる怪奇事件を解き明かしていくが、次第に事件の背後に関わる藤原氏と伴氏の勢力争いに巻き込まれることになる。
作品の魅力
①ストーリー
話のほとんどは数話完結で、現在で言うところの警察である「在原業平」が、菅原道真に不可解な事件を相談し、博学な道真が、嫌々ながらも事件にかかわっていくのが大筋です。
事件そのものよりも、その事件の裏側にある人間の欲望、怒り、悲しみなどの感情がこの物語の魅力であると思います。
道真自身は当初、理不尽を通す権力を嫌っており、学問に傾注していましたが、様々な事件に関わることで、「学んでも、聞くものがなければ意味がない」という考えにいたり、葛藤します。
この道真の権力を嫌う一方、学んだ知識の活用などにより人の役に立ちたいという葛藤が大きな本作の魅力になっています。
業平は道真のように、学んで成長する役割ではなく、道真を外へ連れ出すためのきっかけをもたらす狂言回しのような役割でありますが、過去に関係があった女性との因縁の数々は、染み渡るような情緒あふれる魅力的な大人のエピソードとなっています。
②キャラクター
偏屈な博学者の道真と、恋多き左近衛少将の業平の関係性が大きな魅力になっています。
道真は、上記にも書いた通り、権力の希求と嫌悪の葛藤が魅力的なキャラクターです。事件に対しても自分には関係ないと言いつつ、いつの間にか謎を解くために積極的に行動し、困っている人間がいれば手を差し伸べてしまう好人物となっています。
物語初期から道真は遣唐使となって唐にわたることに強い憧れを抱いていますが、史実では、道真こそが遣唐使の制度を廃止しているため、今後どのように道真の内面が変化していくかが見所だと思います。
業平は、かつて愛した藤原高子に対する忘れられない思いと女とみれば誰彼構わず口説き、関係を持つ節操のなさが魅力と物語を引っ張る推進力になっていると思います。
また、権力争いを嫌う道真に対して、「力に押し流されない生き方は二つある。全てを諦め全てに背を向けてひっそりと暮らすか、お前が力となるかだ」と道真の今後を示唆する助言をするなど、年長者ならではの振る舞いをするのも魅力の一つです(大抵は厄介ごとを持ち込むだけですが)。
そして、物語の中期から権力側である藤原基経(ふじわらの もとつねや大納言「伴 善男(ともの よしお)」等に関してもない面が掘り下げられ、単に権力の拡大に慢心するだけのキャラクターではなくなっています。
それぞれの思惑がどこに辿り着くのか、目が離せません。
まとめ
シャーロック・ホームズとワトソンに代表されるバディ探偵ものに、和風・怪談・宮中の権力争いなどをうまい具合にトッピングして、新しい料理に調理されている良作です。
現在の既刊は14巻とやや多めですが、月刊連載のため刊行スピードが遅く、今から読み始めて最新刊の発売を待つのも楽しいと思います。
それでは、また!