こんにちは、榊原です。今日は書籍の紹介です。福井晴敏さん著作の「月に繭 地には果実」の紹介をします。
この記事では、「月に繭 地には果実」の概要、アニメとの違い、おススメの人についてわかります。また、所々アニメ版の内容について触れているのでご注意ください。
概要
タイトルでは全く分かりませんが、ターンAガンダムの小説です。今でこそガンダムシリーズとして受け入れられているターンAですが、発表当時は格好悪い特異なデザインに否定的な反応が続出でした。もう慣れましたが、攻めまくったデザインですよね……。
最終話直前のジークアクスは今後10年くらいは類似した作品は出ないでしょうが、ターンAの類似デザインは20年しても出ないと思います。
本作は一応ノベライズに当たりますが、登場人物の心理描写を掘り下げるにとどまらず、アニメ化は難しかったと思えるドロドロとした心情のぶつけ合いが描かれています。
アニメとの違い
基本的な流れは結構似ています。ムーンレイスの地球帰還作戦、地球とムーンレイスの衝突、月で知る黒歴史、ギム・ギンガナムとの対立など、アニメ版をご覧になった方なら「ああ、そうだった」と思える内容でしょう。
登場人物の人間臭さについて
地球への憧れ、過去の想いというポジティブな面もありますが、この作品では他者への執着、支配欲など、ネガティブな描写が光ります。
〇ディアナはウィルゲイム(子孫)が車外に唾を吐くのを見て、かつて自分が思いを寄せた人物とは別人であると暗澹たる気分になる
〇キエルはハリーに対して自分を見て欲しいと執着し、ディアナしか見ていないハリーはそんなキエルに苛立ちを覚える
〇地球人に溶け込み、商売を始めるキースと新聞記者として活躍するフランを見て、ロランは疎外感を覚える
それぞれが、一時の口論では済まされない黒々とした感情の吹き溜まりが描かれ、関係の破滅を予感させて胃が痛くなります。
戦闘描写について
直接の戦闘描写は少なめですが、その分一つ一つのクオリティが高いです。特にアニメでは実現しなかった、宇宙でのターンX戦が最高です。オールレンジ攻撃を仕掛けるターンXとニュータイプとしての片鱗を見せるロランの激突は数あるガンダムの小説版でも抜群の出来を見せてくれます。
ターンAの能力に対するギムの動揺、ロランのパイロット技術に対するハリーの驚愕などで、ロランがいかに異常であるかがわかりやすく描かれています。
関係性の決着について
登場人物の関係性を完全に終わらせているのも小説版の特徴です。ハリーのディアナに対する想いの決着、グエンのロランに対する想いの決着、ロランのディアナに対する想いの決着など、感情と感情がぶつかり合い、結末を迎えます。
アニメ版だと結構あっさりと流されたり関係が続いたりするので、「それでいいの?」と思った方もいるかとおもいますが、これでもかというほどの終わりが描かれています。
こんな人がおススメ
アニメ版でターンAを見た人、ガンダムUCが好きな人
アニメ版を見ているのであればビジュアルやキャラをイメージしやすいですし、小説とアニメの違いを楽しめるので是非見てもらいたいです。
また、著者の福井さんが原作のガンダムUCにハマった人にもお勧めです。何もかもが取り返しのつかない状況に陥る中、それでも自分の役割を果たそうと足掻く主人公の姿は、UCと重なる部分があるかと思います。
ロランはバナージよりも受け身な部分はありますが、やるときはやる男なので、好感を持つ人も多いでしょう。
重厚な人間ドラマが見たい人
住む世界が異なる者たちの憎しみを抱くもの、それを終わらせようと足掻く者、闘争を機に成り上がりを目論むもの、それぞれの思惑が入り乱れる様に、次はどうなるのかとページを捲る手が止まりません。
おすすめが難しい人
主人公への追い込みを見たくない人
アニメと比べてロランへの精神的な追い込みが結構キツいので、苦境を一切見たくない人は厳しいかもです。
ガンダムの知識が全く無い人
ガンダムという言葉が失われている世界ではありますが、モビルスーツなどの基礎知識が無いと、想像力を要求されます。
また、逆襲のシャアあたりまでを知らないと意味不明なところがでてきますので、作品を完全に楽しむためには予習しておいた方がいいと思います。
終わりに
濃厚な人間ドラマと燃える対決、その先に訪れる決着など、見所満載の小説です。多少のガンダム知識があれば楽しめます。
キャラの関係性や物語をしっかりと説明してくれるので、アニメ版を見たことがなくても大丈夫です。
全てが終わった後ロランを迎えるのが誰なのか、かけられる言葉が何なのか、是非その目で確かめてください。
それでは、また!