こんにちは、榊原です。皆さん、投資はしていらっしゃいますか?2024年から新NISAが始まり、本屋にはNISAやIDECOの本がビジネス本ランキングの上位になっています。投資ブームと言って差し支えない状況でしょう。
僕は投資を20年ほど前に始め、日産に奨学金をつぎ込んだところ、リーマンショックでエラいことになり、ゴーンショックでさらなる追い打ちを喰らいました。
それでも、数年前から再び投資を本格的に始め、まぁまぁの含み益を出しているのでわからないものです。
今回は、先日ほど見た「ダム・マネー ウォール街を狙え!」の感想をそんな僕の眼から、映画の面白さというよりも、投資についての学びの観点からお話ししていきます。
ややネタバレを含むところがあるので、映画を未見の方はご注意ください。
映画の概要について
本作は、2020年~21年に起きたゲーム・ストップ株騒動についての物語です。主人公キースは証券会社のアナリスト兼動画配信者です。彼が動画内で取り上げたゲーム・ストップ株を個人投資家が買い漁り、空売りを仕掛けているヘッジファンドとの対立が物語の主軸となっています。
金融について全く知識のない方でも空売りやヘッジファンド等、用語についてわかりやすく説明し、庶民対金持ち(企業)という対立をエンタメに落とし込んでいる秀作です。
利確の難しさ
今回の記事の主テーマです。映画ではキースの動画をきっかけに株を買った三人のキャラクターが登場し、暴騰していく株価に葛藤していきます、最も注目すべきなのは看護師のジェニーです。
彼女はローンを抱えていましたが、ゲーム・ストップ株の暴騰により資産が激増します。追加投資をしている関係もあり、正確な投資金額はわかりませんが、一時は100倍以上の値をつけているため、相当な含み益があったことでしょう。
それにもかかわらず、物語終了時でも株を持ち続けており、資産額は若干のマイナスです。他の二人が資産を大幅に増やしていることを見ると、株をやったことがない人からすると「上がった時に売ればいいのに」「下がり始めたら売ればいいのに」と考えるかもしれませんが、これは本当に難しいことです。
①もっと上がるかもしれないと思い手放せない
中盤で同僚が何度も利確するように忠告しているにもかかわらず、「もっと上がる」「金持ち(ヘッジファンド)には負けない」と言い続け、彼女は聞く耳を持ちません。これ、別に階級闘争にのめりこんでいるわけではなく、普通に投資あるあるです。
投資している金額が2倍、3倍になっていくのは全能感があります。一か月分の残業代、いや、月給すら一日で増える状況になると、感覚が完全に狂います。毎日が数%どころか、日によっては数十%上がる状況では手放方が難しいです。
いくらゲーム・ストップ株が割安とはいえ、100倍の株価が妥当ではありません(そもそも劇中でゲーム・ストップの決算は好意的に描かれていません)。いずれは必ず下がるのは目に見えています。それでも「今売ってしまっては、これ以上資産が増えない」という心理が働きます。
②待てば戻るかもしれないと思い手放せない
一度ゲーム・ストップ株は下落するものの、再び上昇を始めます。それにもかかわらずジェニーが利確をできなかったのは、一度天井の価格を見ているからです。
例えば1万円の株が120万円まで上がり、100万円にさがったとき、頭にあるのは、90万円あがったことではありません。30万円損したことです。そして「あの時売っていれば」と思いつつ利確するのは相当に難しいです。
一度上がったので、時間さえ経てばもう一度いくはず、という考えが必ずよぎります。実際、終盤で株価は再び急騰しているため、猶更手放すのは難しいでしょう。あらゆる投資や賭け事に共通しますが、「取り返す」ということに意識が行くと冷静な判断ができなくなります。
③利確しない者の末路
前述のとおり、急落の後に急騰することは実際あるため、下落を確認して速攻で売るのが正しいとはいえませんが、一つだけ言えることがあります。
それは、「上がっても落ちてもいいような状況にしておくべき」ということです。他のキャラクターが半分利確して大幅に資産を増やしているように、やりようはあるんです。
「頭と尻尾はくれてやれ」という投資格言があるように、天井と底を完全に当てることは不可能です。
それにも関わらず、ジェニーは含み益を当て込んで、旅行に出かけます。しかも、旅行先のプールで株価の急落を知るという惨劇に見舞われます(旅行先ですら株価のチェックを怠らないことに病理を感じました)。
飛行機の中で「もうこんな席には座れないから」とCAに酒のお代わりをもらうシーンは胃が重たくなりました(もっと強い酒を持ってくる、とせめてもの慰めをするCAが味わい深いシーンです)。
終わりに
個別銘柄の全力投資による爆益と、それに伴う葛藤、そして下落した時の精神的苦痛を余すことなく見せてくれる作品でした。
新NISAで長期投資をする人はそういう目線で見る必要はないかと思いますが、株で人生一発逆転を狙う人は疑似体験できる教科書として観ておくべき映画だと思います。
それでは、また!