こんにちは、榊原です。今日は今村翔吾さん著作の小説「イクサガミ 天」の紹介です。
この本は、こんな人におすすめです。
- 面白いデスゲームの小説を求めている方
- るろうに剣心のような、カッコいい剣豪小説を読みたい方
- 時代劇に苦手意識を持っている方
目次
あらすじ(公式ホームページより)
明治11年。深夜の京都、天龍寺。
「武技ニ優レタル者」に「金十万円ヲ得ル機会」を与えるとの怪文書によって、腕に覚えがある292人が集められた。
告げられたのは、〈こどく〉という名の「遊び」の開始と、七つの奇妙な掟。
点数を集めながら、東海道を辿って東京を目指せという。
各自に配られた木札は、1枚につき1点を意味する。点数を稼ぐ手段は、ただ一つ――。
「奪い合うのです! その手段は問いません!」
剣客・嵯峨愁二郎(さが しゅうじろう)は、命懸けの戦いに巻き込まれた12歳の少女・双葉(ふたば)を守りながら道を進むも、強敵たちが立ちはだかる――。
弩級のデスゲーム、ここに開幕!
いいところについて
エンタメ特化の設定
「あらすじ」で気づいた方もいるかもしれませんが、この小説、完全に「賭博黙示録カイジ」を時代小説に再構成したものです。
荒唐無稽な遊戯、勝者に与えられる巨万の富、ゲームを開催する怪しげな組織。カイジの要素を、剣豪と少女の交流や架空の剣術など、熱くなる要素を盛りに盛ったエンターテイメント小説として昇華しています。
カイジの再構成、といいましたが、カイジのように細かい頭脳戦は無く、こちらでもついていける程度のロジックで話を進めてくれます。
ルール自体も、各参加者に渡された札を集めてポイント通過という非常にシンプルなものになっているので、混乱することは一切ありません。
ゲーム説明時に質問タイムを設けられるのですが、参加者がいい具合にお馬鹿さんぞろいなので(笑)、ロクな質問をせず終わってしまいます。
命を懸けるには説明不足にもほどがある状況で開始するので、主人公たちがルールを検証していくのも面白さの一つとなっています。
例えば、「札無しで通過しようとするとどうなるのか」「札無しで警察などに拘束された場合どうなるのか」など、そういえばそうだったと思うようなことを逐一チェックしてくれます。
シンプルかつ胸熱なストーリー
嵯峨、双葉が金銭を求めて参加した遊戯「こどく」の中で死闘を演じつつ、先へ進むというのが大筋になっています。
筋自体はシンプルなので、如何に嵯峨の死闘を魅力的に描くかというのがポイントになってきますが、非常に魅力的に描けています。
嵯峨がかつて幕末で暗躍した凄腕の凶手であり、飛天御剣流知られざる古流剣術を修めているという時点で胸熱ですが、双葉という「守るべきもの」を背負っていることが物語のアクセントに一役買っています。
双葉は他の参加者と比較すると、戦闘力が無いに等しいため、嵯峨は双葉を守りつつ、自分と双葉の点数を稼がなければならないことが思案のしどころとなっています。
そのため、単なる戦いの一本調子ではなく、地形や協力者など、状況に応じた策を練りつつ足を進める楽しさが味わえます。
切れ味の良い展開
勝者に巨万の富を与えるゲームの説明から開始まで、前半の約30ページでやってくれます。
これは非常に素晴らしいところだと思います。「小難しいことはいいから、さっさと戦ってくれ」という読者のニーズを完全に理解した思い切りの良さです。
ゲームの性質を一言で表した「奪い合うのです!その手段は問いません!」というセリフにも、その思い切りの良さが現れています。
また、最初こそ292名という参加者の多さですが、ゲームの性質上ガンガン死んでくれるので、覚えるべき名前は非常に少数という親切設計ですし、双葉が人格のリトマス試験紙の役割を果たしてくれて、善悪もはっきりしています。
最初から最後までパキパキと進んでいくので、ダレルところがありません。非情にスピーディーでスッキリした展開になっています。
イマイチなところ
荒唐無稽な設定への疑問
デスゲームを描いた作品の宿命です。ここを乗り切れるかどうかに本作を楽しめるかどうかが懸かっていると言っても過言ではありません。
一々挙げて行くときりがありませんが、個人的には日本全国に怪文書が知れ渡っているにも関わらず、潜入した警官が少なすぎるのが気になりましたねぇ……。
突っ込みは野暮なのだと理解して、物語を楽しみましょう(笑)。
終わりに
読むのに一切ストレスがかからない爽快冒険活劇です。三部作であると明言されているので、ダラダラ引き延ばされる心配もありません。
普段時代劇を読まない、むしろ少年ジャンプやマガジンを好む方こそ楽しめる作品だと思いますので、ぜひお読みください。
それでは、また!