こんにちは、榊原です。今日は稲田豊史さん著作の「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形」の紹介と、その本を読んで自分なりに考えたことをつらつらと書いていきます。
この記事は下記の方を対象としています
映画等を早送りする鑑賞方法に違和感がある方
映画を早送りすることを批判する人に反感を持つ方
目次
概要
映画を1.5倍速などで視聴する人たちに違和感を持った著者が、鑑賞者たちからの聞き取りから理由を分析します。
分析結果から、行動原理、彼らに合わせた表現方法やコンテンツの有り方などに話を広げていきます。
著者のスタンスとしては、倍速視聴に対し基本的には「それでは作品を味わったことにはならない」と否定的な立場のようです。
いい点
頭ごなしに否定はしない
文章から、著者が倍速視聴に対し否定的であることがひしひしと伝わりますが、多くの人に意見を聞いたり、以前とは違うコンテンツの状況から鑑賞方法の一つとして「そういうこともあるか」くらいに考えているのはグッドだと思います。
自分と違う考え方(この場合は鑑賞スタイル)を理解するのは相当難しいことだと思いますので、首を傾げながらも受け入れるというのは中々できることではありません。
丁寧な聞き取りから行動原理を分析し、現代社会の問題点にまでテンポよく発展させてくれるので、ストレスなく楽しめます。
説明過多なアニメ等への分析が面白い
2020年に大ヒットしたアニメ「鬼滅の刃」を始め、何故セリフで全てを説明するコンテンツが生産されるのか、についての分析が面白いです。
僕も「鬼滅の刃」については、主人公の炭次郎が考えていることを全てセリフで説明するので、見ているときからかなり違和感があったため、納得でした。
イマイチな点
滲み出る「最近の若者は……」
リサーチ結果で20代、30代に倍速での鑑賞者が多かったとはいえ、ちょっと「コミュニケーションのための仕込み」という方に振り過ぎの感がありましたねぇ……。
僕の父は70代の年金生活者ですが、面白いかどうか判断するために倍速視聴をしていますし、上司は40代後半ですが、日常的に倍速で視聴するそうです。
倍速視聴の行動原理として、「若者がコミュニケーションのために短時間で多数のコンテンツ消費を目的としている」と判断しすぎな気がしました。
僕の倍速視聴へのスタンスについて
倍速の視聴は割と有りなのではないかと思ってます。本でも言及されていましたが、現在はサブスクリプションのサービスが急速に普及し、コンテンツ量が多すぎます。
例えばアイアンマンから始まったアベンジャーズシリーズは2022年5月現在で28作目。28作目の「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」はディズニー+に加入して「ワンダビジョン(全9話)」も見ないと全容が掴めません。
2021年に完結したエヴァンゲリオンについては、最終作「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を楽しむためにはテレビシリーズ26話、旧劇場版、新劇場版3作を観ないと不明瞭な点が残ります。
上記のものは極端な例にしても、ゲーム・オブ・スローンズはシーズン8まで、ウォーキング・デッドはシーズン11まで、ペーパーハウスはシーズン5までと、評価が高いドラマ等もどんどん続編が作られる傾向にあります。評判が良くて参戦しようと思っても、まともに視聴するのはハードルが高すぎるでしょう。
特にMCUは当たり外れが大きくてまともに見る価値がないのも散見されますし。
本であれば、本屋で目次を見てパラパラとめくればザックリと概要は掴めますが、映画やドラマともなればそうはいきませんので、致し方ないところではないでしょうか。
充実感としてのコストパフォーマンス
長い物語を見た上で楽しめる作品があることはわかるのですが、短い時間で、「ああ、いいもの見たな」という充実感を味わうためには、名作を映画館で作品を鑑賞するのが一番いいように思います(何をもって名作というかは非常に難しいですが)。
商業上の利点があるのは分かりますが、できれば一発で完結させて欲しいんですよねぇ……。完結する作品は劇場を出るときの満足度がかなり高いです。
終わりに
映画を早送りで見る、という行為の行動原理だけではなく、現在のコンテンツの作り方や「なろう系」を始めとするラノベなどにも言及していて興味深く読めました。
この本を読んで、自分のコンテンツへの向かい合い方について考えるのも結構楽しいです。ぜひ、ご覧ください。
それでは、また!