こんにちは、榊原です。GWという文字を見てメタルギアソリッドを思い出せる方は、相当アレな人だと思います。僕です。
今日は、佐藤大輔さん著作の小説「皇国の守護者」についてご紹介します。10年ほど前に漫画版を読んだことしかありませんでしたが、ふと電子書籍で読んでみたました。
セリフ回しの格好良さ、矛盾を抱える人物の心理描写、戦術の構想など、数々の魅力がある傑作です。この作品は、こんな人におすすめです。
- 回りくどく癖のある文章がOKな方
- コードギアスや信長の野望など、戦術・戦略を要とする作品が好きな方
- ヘルシングなど、独特なセリフ回しに熱くなれる方
目次
あらすじ
長らく太平を謳歌していた島国<皇国>、その最北端・北領に突如、超大国<帝国>の艦隊が押し寄せる。
<帝国>が誇る戦姫・ユーリアの指揮する精鋭部隊の前に、為す術なく潰走する<皇国>軍。
剣牙虎の千早とともに、圧倒的軍勢に立ち向かう兵站将校・新城直衛中尉は、蹂躙されゆく祖国を救えるのか…!? 佐藤大輔・原作の同名小説を、俊英・伊藤悠が苛烈に描く戦記浪漫!
いいところ
キャラクターの魅力
主人公「新城直衛」について
新城は戦闘での失敗や戦死を非常に恐れる一面を持ちながらも、巧みに戦術を練って多数の敵軍に抗する手を打つ策略家でもあります。
更に、兵士を鼓舞したり、子どもを死なせたことに罪悪感を抱くことを恥じる人間性を持つ複雑な人物です。その狂気と真面目さは印象的なセリフの数々にも表れています。
(大隊長が戦死したという報告を聞いて)「そいつは素敵だ。楽しくなってきた」
「軍の行動によって生じた問題の責任は、それを命じた者だけが背負う。命じられたものではけしてない」
「我々はこの負け戦、それを単独で支える英雄となるわけだ。楽しいぞ。軍人としてこれ以上の名誉はない」
小胆にして大胆。非情にして情け深い。矛盾した部分を内包している新城が圧倒的多数を相手に奮闘していく姿が楽しいです。
他の登場人物
1巻は登場人物が少なめですが、印象に残った人物は↓の感じです。
猪口:階級は曹長。新城とは幼年学校以来の付き合い。複雑な心情の人間性を理解しつつも支える。
若菜:階級は中隊長。家柄で就任しているが、実戦経験はない。部下の信頼を得ていて自分よりも隊を率いる能力を持つ新城に嫉妬している。
漆原:階級は少尉。部下に思いやりをもって接する新城に好感を持っていたが、あることをきっかけに悪意をもって接するようになる。
敬意や畏れ等をもって新城と接する姿が描けていて、リアルな感じです。たしかに、新城みたいな面倒くさい人は部下でも上司でも大変だろうなぁ……と思わないでもないです。
猪口や漆原などの心理描写は新城と比較すると少なめですが、彼らの心情への評価が端的でわかりやすく描かれています。
イマイチなところ
設定の説明が冗長
政治・経済・軍事について相当に細かい描写があり、しかも結構長いです。世界観を作りこむための必要な文章と言えなくもないですが、キャラクターとの掛け合いや物語の進展について気にされる方であれば退屈に感じる可能性があります。
僕が読んだときは、一度パラパラと読み飛ばして、読み終えてから設定部分を読み直すという手法を使いました。
正直、皇国の守護者を読むにあたって一番とっつき難いところだと思います。ここで挫折してしまうのはもったいなさすぎるので、何とか乗り切っていただきたいです。
漫画版について
全5巻で集英社より出版されていましたが、残念ながら絶版となっています。
やや打ち切りっぽいラストですが出来が悪いということでは全然ありません。むしろ、複雑な設定や状況説明を短くまとめ、ストーリーやキャラクターの魅力を抽出して煮込み直している傑作です。
特に部下として登場する兵頭や妹尾などのサブキャラクターは小説版よりも魅力が上乗せされていますし、戦闘描写は絵にされているため迫力が増しています。
ブックオフなどで見かけたら迷わず買うべき一冊です。絶版になると知っていたら処分しなかったのですが。電子書籍で再販してもらいたいです。
終わりに
設定に関する文章が若干だるいですが、それを補って余りある程キャラと戦術要素、カッコいいセリフの魅力に満ちています。
時間があるときに腰を据えて読む作品としてかなりおススメです。
それでは、また!