こんにちは、榊原です。アマゾンプライムとHuluでコナン映画配信中ということで、「水平線上の陰謀」について感想を書いていきます。
コナン映画は、作品によって質の差が大きいシリーズですが、ミステリとして上質な一本に仕上がっていると思います。
目次
あらすじ
15年前、北大西洋・海上。貨物船・第一八代丸が、巨大な氷山に衝突し、沈没。船長と一人のクルーが犠牲に。
時は流れ現代、西多摩市。大財閥・八代グループの一つ、八代造船の設計士が、車を運転中に心臓発作を起こし、事故死。
さらに半月後……。太平洋を航海する豪華客船アフロディーテ号。コナン、蘭、小五郎たち一行は、その処女航海に参加していた。
しかし船中には不審な人物が暗躍、ついに殺人事件が発生する。それは、海上というどこにも逃げ場のない空間で繰り広げられる、恐ろしい陰謀の始まりであった。
概要
水平線上の陰謀は、豪華客船アフロディーテで発生する殺人事件、そして爆破する船からの脱出が大きな軸になっています。
お約束の人物紹介が終わり、すぐにアフロディーテを舞台にした物語が始まります。コナン映画は90分と短めの尺だからか、テンポがいい作品が多いのですが、水平線所のストラテジーも経緯の説明を最小限にしてくれます。
豪華客船が舞台のため、コナン映画お得意の爆破をやってくれるのだろうと期待していたら、爆破→船を丸ごと沈めるという景気の良さが最高です。
ミステリーパートについて
予告編では、15年前に発生した事故との関連性を示唆する内容でしたが、ぶっちゃけそこは大したことないです。「シリーズ初のデュアルサスペンス!」って、何と何が二重だったのか……。
シナリオライターの日下が犯人として立ち回るのを、古畑任三郎のようにバッチリ見せるので、どうしたのかなーと思いきや、その裏に隠されていた事件の全体像は、他のミステリー小説などと比べても遜色のない質の高さでした。
日下の行動を絵で見せている部分、見せていない部分の意味がわかると、事件が別の様相を見せていくというのは、素直に巧いと思います。
「このトリック、無理有りすぎじゃね?」と観客に突っ込ませることも想定内というのがいいです。こちらに考えさせ、それを上回るという絶妙なバランスが取れています。
伏線回収について
水平線上の陰謀で屈指の注目ポイントです。この映画、貼られた伏線が自然で観客に悟らせず、非常にうまく回収しています。
具体的には、博士の思いやりについての話、『サッカーボール』を蹴っていたコナン、短すぎてブレスレットになってしまった金メダル、折り紙の舟です。
個別の物事、エピソードとして完結しているはずなのに、それが後で大きな意味を持ってきたのには、思わず「おお!」と膝を打ちました。
物語の本筋には何の関係もないと思われた少年探偵団のプレゼントエピソードが、まさかこんな形に着地するとは、誰が思えるでしょうか。(僕が見た)全コナン作品を見渡してもこれを超える伏線回収はありません。
また、元太の無神経な発言から閃きを得て園子発見に繋げるのも巧いです。コナンが真っ先に考えた冷凍庫は、人一人を運んでいくには目立ちすぎますからね。また、元太の発言にエクスキューズを与えてくれます(笑)。
アクション
船の爆破、ということで逃げ惑い混乱する人々や人間の醜さを描くのかと思いきや、非常に薄味でした。乗客の皆さんは理知的で、訓練を日ごろから詰んでいるかのようにスムーズに避難してくれます。
犯人とのバトルも、ちょっと予定調和に感じて緊迫感があまりなかったように思います。明らかに武道の心得がなさそうなのに、異様に強いのは笑ってしまいました。
緊迫感という意味では、序盤の園子捜索が一番あったと思います。園子の状況って、ソリッドスリラーの映画「リミット」とほぼ同じですからね。そりゃあ、パニックになって恐慌をきたしますよ。
キャラクターの魅力について
コナン、蘭、小五郎、少年探偵団に集中し、キャラの魅力を引き出していると感じました。90分の尺では、これくらいに絞ると長いエピソードでバッチリ語れますね。
沈没する船に残り、子どもからのプレゼントを探しに行って死にかける蘭姉ちゃんは、いくつ命があっても足りないと思いましたが、蘭の命が危険に晒されるのは映画恒例なので、ここは様式美というやつかもしれません(笑)。
終わりに
案の定故障する探偵バッジの通信機能、船の壁に頭を打ち付けてあっさりと気絶する蘭など、ちょっと無理のある展開が無くもないですが、それを上回るミステリーとしての巧さ、何よりも伏線回収の見事さが素晴らしくてどうでもよくなります。
コナン映画と侮るなかれ、ストンストン、と伏線が回収されていく快感が楽しめます。かなりおススメです。
それでは、また!