こんにちは、榊原です。今日は、映画の紹介です。2月25日より上映が開始された、ケネス・ブラナー監督・主演の「ナイル殺人事件」についてご紹介します。
目次
「ナイル殺人事件」について
原作はアガサクリスティー原作の小説「ナイルに死す」で、1978年に映画化もされています。本作は、2017年にケネス・ブラナーが監督・主演を務めた「オリエント急行殺人事件」に続くリメイク版の続編となります。
僕の立ち位置としては、原作未読、リメイク版の前作も未見ということで、予備知識完全にゼロで挑みました。流石にポワロの名前くらいは知っていましたが、本当にその程度の知識です。
あらすじ(シネマトゥデイを一部改変)
エジプトのナイル川をめぐる豪華客船内で、殺人事件が起こる。
容疑者は、大富豪の娘リネット彼女とサイモン(アーミー・ハマー)の結婚を祝いに駆け付けた乗客全員だった。
リネットに招かれていた私立探偵ポアロ(ケネス・ブラナー)が捜査を進めていくうちに、それぞれの思惑や愛憎が絡み合う複雑な人間関係が浮き彫りになっていく。
魅力
ストーリー
キャッチコピーである「愛の数だけ、秘密がある」のとおり、登場人物たちのほとんどは、愛を原動力にして行動しています。
行動の多くは、万人には称賛され難いものではありますが、その人なりの考えで実行しているため、一概に否定できないと思いました。
また、ポワロ自身も決してスマートな探偵ではなく、むしろ自己愛の強い人間として劇中の人間から非難されているというのも、この手の映画としては珍しいのではないでしょうか。
正直、トリックについては、「そうはならないだろう」と突っ込まざるを得ない部分がいくつかありましたが、技巧的な部分よりも、愛によって事件を起こす人間のドラマとして観ると面白かったです。
犯人当てについて
アガサクリスティー作品の特徴のようですが、全員が殺人の動機を持っているため、一人一人尋問によって絞り込んでいく面白さがあります。そんな連中と新婚旅行に行くなよと言う突込みはありますが、そこは致し方ありません。
ポアロはどうも、犯人である可能性を示唆し、その人物がどのような反応をすることで見極めているようです。この辺、はっきりと動機や手法について話すため、論点が分かりやすくていいと思います。
登場人物
新婚夫婦であるリネットとサイモン、サイモンに捨てられた元婚約者ジャクリーン、リネットに未練がある医師ウィンドルシャム、腹黒そうなリネットの従兄弟アンドリューなど、一筋縄ではいかない曲者が多く登場します。
旅行中にも、関係性が分かるような描写がありますし、尋問中にも改めて関係性や動機を整理してくれるので、誰が誰かわからないことはないと思います。
スタッフロールを見るまでワンダーウーマンだとわからなかったガル・ガドットさんも気品のある美しさがありましたが、本作で一番おいしいのは、ストーカー化した元婚約者のジャクリーンでしょう。
サイモンは最後は私のところに帰ってくるの!と息巻いている場面は、目に狂気が宿っているのがわかりますし、ポアロが失った愛について語っているときは、理解の色を示しているのが感じられます。
ジャクリーンを演じているエマ・マッキーさん、何も語らずとも目でその人物の心情を表現するのが、凄くうまいです。本作で初めて見ましたが、今後多くの映画に起用されるのではないでしょうか。次作での主演も決まっているようです。
イマイチなところについて
事件発生まで長い
元の小説がそうだからなのでしょうが、最初の事件発生までがとにかく長いです。エジプトの観光旅行やパーティーを結構長めに尺を取っているため、事件が起きるまでに一時間程度かかっています。
登場人物の会話や所作などで、関係性や性格を表現するのはいいのですが、もう少し短くしても良かったように思います。
ポアロという探偵について
尋問から整合性の取れない行動や発言を見つけ出して犯人を炙り出すというスタイルなのですが、自分の有能さを示したいためなのか、一々当事者の前で語ります。
この辺はミステリーとしてよくある演出なのでいいとは思うのですが、ポワロの問題は、危険物所持の確認や、容疑者の監視を一切行いままに始めるところです。
正直、この男が注意深ければ助かった命が複数名あったように思うので、かなり気になりました。
本筋の殺人事件と別に発生した案件についての解説を行っているときに、別の殺人が発生した時は口あんぐりですよ。タイトル記事にも書いた、「無駄話の間に、また人が殺されたわ!」と批判されるのですが、マジでその通りだと思います。
終わりに
予告では「密室殺人事件」という煽りがあるのに、密室でも何でもないというアレなところはありますが、愛というテーマに沿って作られたドロドロミステリとしては、まずまずの出来だと思います。
クリスティー作品であれば、数年前に映画化した「ねじれた家」の方が、犯人の意外性や衣装の豪華さがあって面白かったように思いますが、ポアロという明確な探偵役が不在のため、好みが分かれるところだと思います。
なお、パンフレットは役者紹介とコラムという、オーソドックスな造りですが、役者紹介を一読すると、概ね犯人の目星がついてしまうので、鑑賞後に読むことを強くお勧めします。
それでは、また!