こんにちは、榊原です。今日は、ウェブ小説の紹介です。WINDshellさん著作の同人小説「青い花」についてご紹介します。
目次
青い花について
1995年にテレビアニメが放送され、今なお高い人気を誇る「新世紀エヴァンゲリオン」を元ネタにした同人小説となります。
アニメ版26話「世界の中心で愛を叫んだケモノ」で描かれるエヴァも死徒もない世界で生きるシンジたちを描いた物語です。全12話で、一話ごとの話も短いため、サラッと読むことができます。
あらすじ(名前の漢字は作中の物です)
中学三年生の碇真治は、幼馴染の明日香や塔司とともに穏やかな日々を過ごしながらも、何気ない毎日を送ることに疑問を覚えていた。
言葉にできない窮屈な思いを抱きながら生きる真治は、明日香と買い物の途中で、塔司たちにゲームセンターに誘われる。
ゲームセンターに展示されていた対戦型格闘ゲーム「新世紀エヴァンゲリオン」に真治はのめり込み、瞬く間に上達し、何気なく入力したスコア「3rd」から、凄腕の「サードチルドレン」として噂になるが……。
魅力
ストーリー
エヴァンゲリオンのお馴染みのキャラクター、性格設定を利用していますが、もどかしい悩みを持つ少年が、夢中になるものを見つけ、周囲との関りを見直し、新たに道を進む、ストレートな青春小説となっています。
真治は、アニメ同様、自分の生き方に迷って苦しむ場面もありますが、周囲の友人や大人に助けられ、自分を取り巻く世界と向き合っていきます。
少しずつ前を向き始めた真治が、一歩を踏み出すシーンが、アニメ19話「男の戦い」を彷彿とさせる加持さんとの会話です。以下、ちょっと長いですが抜粋します。
第七話より
「でも、でも」真治は問う。「そうして得た僕のリアルが、現実が、他の人達のそれと食い違っていたとしたら、僕はこの世界で生きられないよ!」
加持の目。優しい目。真治は見つめる。
「そうかも知れない、いや、確かにそうだろうね」「じゃあ、じゃあ!」
「この世界の成り立ちは、そういうものなんじゃないだろうか?ひとりの人物が、ある現実に目覚め、同じ現実に生きようとする者達と結びついて、共同体ができる、それが家族になり、街になり、国になり、この世界全体になっている、だからある者にとっては、この世界は、かけがえのない現実であり、またある者にとっては、否定されるべき嘘っぱちになるのだろう」
「じゃあ、僕がこの世界に、いや、この瞬間に生きている他の人達と同じリアルを共有できないとしたら、やっぱり、僕はこの世界にいられない!」
「真治君、おそれてはいけない」「でも、でも」
「自分が求め向き合い、そうして得た現実、君の言うリアルが、他人と食い違うのなら、それは仕方のない事だ。別の世界で生きればいいさ。乱暴なたとえかも知れないが、君がエヴァに夢中になって受験に失敗したとしても、君が満足ならそれでいい、という事になるだろう。」
青い花は、20年以上前の作品ですが、この言葉は普遍的で優しく、胸に刻む価値のある言葉ではないでしょうか?
他人とうまく合わせられない、人と同じように生きられない、自分だけうまく歩けない。そういう悩みを持つ人に、とても響く優しい言葉だと思います。今を悩む、全ての人に見てもらいたいです。
設定
2話で真治が出会うゲームとしてのエヴァンゲリオンは、作者自身が参考にしたと公表していますが、完全に「電脳戦機バーチャロン」です。
バーチャロンとは、20年以上前にゲームセンターで流行した、2本のスティックレバーと、レバーについたトリガーでマシンを操り、対戦相手とぶつかり合う格闘ゲームです。現在のイメージ的には、ガンダムの「戦場の絆」が近いかもしれません。
疾走感溢れるゲームにシンクロする真治が、エヴァにハマり、悩みを忘れて熱中する楽しさ、全く知らない人とゲームで盛り上がる関係性を築くなど、ゲームの面白さの描写が躍動感たっぷりに描かれています。
キャラクター
上述しましたが、アニメ版の性格であるため(綾波は26話仕様)、すぐに誰がどういう人物かを掴むことができると思います。
アニメ版だと結構殺伐としていた空気でしたが、本作は生死の狭間に立つことは全くないため、安心して彼らの生活を見ていられます。
トウジやケンスケはもちろん、青葉、日向、冬月など、26話の学園世界では描かれなかったキャラクターも多数登場します。
ぴったりの役回りで登場するキャラもいれば、意外な役回りで登場するキャラもいるので、お気に入りのキャラクターの登場を楽しんでいただければと思います。
終わりに
今読むと、携帯の設定など、近未来にしてはどうなんだろうという部分もなくはないですが、それを補って余りあるほどの優しさに満ちた物語です。
一人の少年が、悩み、答えを見つけ出し、一歩を踏み出すまでを描いた青春小説です。同人小説ということもあり、エヴァンゲリオンを知っていないとどうにもならない所はありますが、知っている方でしたら是非ご覧いただきたいと思います。
特に本作は、完全に更新が停止されたサイトに置き忘れられているようなので、いつまで読めるかわかりませんので、お早めに読んでいただければと思います。
それでは、また!