超スローペースな傑作歴史ファンタジー マンガ「ドリフターズ」の紹介

 こんにちは、榊原です。映画「大怪獣のあとしまつ」が令和のデビルマンと呼ばれていることに衝撃を覚えています。

 デビルマンと言えば、永井豪さんの不朽の名作として有名ですが、その実写映画版は類稀なるクソ映画として名を轟かせています(数年前の「鋼の錬金術師」は、瞬間風速はデビルマンを超えたとして、ちょっとした話題になりました)。

 そんな映画に例えられる大怪獣のあとしまつには非常に興味がありますが、お金と時間を払って、クソ映画見るのって結構疲れるんですよねぇ。

 それはそうと、今日は本の紹介をします。平野耕太さん著作の漫画「ドリフターズ」をご紹介します。

傑作歴史ファンタジー

ドリフターズ

セリフ回しが独特でカッコいい

シリアスとコメディの緩急が酷い

拳を握る国奪り物語

4

ストーリー

4

キャラクター

4

セリフ回し

4

おすすめ度

目次

マンガ家「平野耕太」について

 歌舞伎の見えに似た決めポーズと、独特のセリフ回し、突然のコメディ展開が特徴的な作家さんです。代表作はHELLSINGですが、個人的には以下略というエッセイコミックが、かなりトチ狂っていて大好物です。

 「なんで俺と平野綾が結婚できないんだ!平野って名字からして、歴史的に俺の嫁だろ」という素敵すぎるセリフが最高でした(挨拶は「冒険、でしょでしょ」)」。

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あらすじ

 西暦1600年、関ヶ原の戦いの最中、謎の存在「紫」の手により島津の退き口から、エルフやオークのいる異世界に召喚された島津豊久は、同様に流れ付いた織田信長那須与一と出会う。その地で「漂流者(ドリフターズ)」と呼ばれる豊久らは、成り行きと武士としての本能から、人間が支配するオルテ帝国に虐げられるエルフの村を解放し味方に付けると、その勢いのまま「国奪り」を開始する。

魅力

ストーリー

 歴史上の人物の異世界転生ものということで、色物とみられるかもしれませんが、話の造り自体は、ものすごく真っ当です。

 人としてどこか外れている部分がある主人公たちが、虐げられている民族を束ね挙げ、圧政を打倒し、更には人間を絶滅させるべく動いている「黒王」と呼ばれる存在に挑む物語となっています。

 最初の方は、豊久は、異世界ということで言葉も通じませんが、翻訳こんにゃく的お札によって、あっさりと解決。類まれな戦闘能力と、竹を割ったような気性でエルフたちに助力を請われ、信長や与一などの仲間と共に国盗りに乗り出すという流れが、とんとん拍子に進み、テンポは非常に良いものとなっています。

 歴史上の人物が主要人物のため、中高程度の日本史・世界史の知識があると、彼らの会話をより楽しめますが、それぞれが非常に個性的なキャラクターなので、雰囲気だけでも楽しむことはできます(僕も高校では政治経済を選択していたため、歴史ネタは結構わからないところが多いです)。

②国奪り物語としての魅力

 豊久、信長、与一がそれぞれの持ち味を生かして、急速に勢力を拡大させていく様子が痛快です。食料はどうするのか、戦闘の訓練を受けた者たちがないことをどう指揮するのか、という実務上の問題はあまり描かれません。

 信長は天才的な指揮と策略で戦略面において多大な力を発揮しますし、豊久と与一は絶大な戦闘力で、雑兵では足元にも及ばない戦果をガンガン出していくので、ハラハラドキドキ、というよりも彼らが破竹の勢いで勝利を重ねていくのをニヤニヤしながら見ることができます。

 雑魚的として描かれる代官たちを、無双シリーズもかくやという勢いでぶちのめしていくパートと、黒王を筆頭に、人類滅亡を画策する者たち(土方歳三、ジャンヌ・ダルクなど)とぶつかり合うボス戦のパートがきっちりと分かれていて戦闘シーンはメリハリがあるものとなっています。

③セリフ回し

 平野さんのセリフ回しが独特であることは上述しましたが、今作においては、人を奮い立たせるセリフが際立っています。

 特に豊久が、自分らを虐げてきた代官に挑もうとするエルフに賭ける言葉「例え死んだとて、あの世で父祖にこう言える。闘って死んだと。家族を守ろうと死んだと。女房を取り返せ。子を取り返せ。国を取り返せ。己を取り返せ」は、思わず拳を握る素晴らしいシーンになっています。

 そうかと思えば、ハンニバルがボケてて、「お腹が空いた。ローマを焼こう」というセリフをのたまうなど、緩急がつきすぎて目が回ります。

④キャラクター

 戦のことしか頭にない豊久、人心を操り、焚き付け、非道ともいえる策を弄しながら豊久を王にするため画策する信長を始め、多種多様のキャラクターが登場します。

 歴史上の人物という背景に頼らず、それぞれが平野さん独自のキャラクターとして生き生きと活躍し、見ていて気持ちの良いものになっています。

 特に信長は、自身の経験を生かして騎馬をあっさりと撃退したり、ボケたハンニバルを「キイチゴじいちゃん」と呼ぶなど、シリアスからギャグまで幅広い活躍をこなす非常に魅力的なキャラクターとなっています。

 信長の一番印象的なセリフは、酒盛りして収拾がつかなくなっている豊久やドワーフたちを見て、「前略。織田家の皆さん、お元気であるか。前右府である。今思えば、お前ら、すごく俺の言うこと聞いてたんだね。お前らエライ。だが、光秀。テメーは殺す」。爆笑でした。

終わりに

 2009年から連載が始まっているにも拘らず、現在はまだ6巻しか出ていないという超スローペースな作品です。

 もう少し早く続きを読みたいですが、新規参入の方にとっては、非常に追いつきやすく、そして面白い作品になっています。是非、一風変わった歴史ファンタジーをお楽しみください。

 それでは、また!

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ABOUT ME
榊原 豪
榊原 豪(さかきばら ごう)です。都内在住で、主にマンガ、映画、小説、アニメ等のエンターテイメントの情報を発信していきます。 楽しいこと、面白いことを探すのが好きですし、「何を『面白い』というのか?」という考察なども結構好きです。 よろしくお願いします。