こんにちは、榊原です。今日は小説の紹介です。今村翔吾さん著作の「イクサガミ 人」についてご紹介します。
イクサガミについて
歴史小説でありながら、大金を得るために凄腕たちが命を懸けるデスゲームものです。「蟲毒」と呼ばれるゲーム性と魅力的なキャラクター(暗殺剣の遣い手、上方訛りの忍者、人斬りなど)のぶつかりが繰り広げられるシリーズです。
第一巻「天」、第二巻「地」に続いて3巻目となります。当初は3巻で完結の予定でしたが、次作「神」で完結に変更されました。
一巻ではゲームのルールの解き明かしと戦闘描写の熱量に興奮しましたが、二巻では展開に少々不満点がありました。歴史ものの宿命かもしれませんが、歴史上の有名人が出てきた時点で、展開が読めてしまうんですよねぇ。
そんな中での3巻に期待半分、不安半分で読み始めました。
あらすじ(公式ホームページより)
弱き者は皆、死んだ。「蠱毒」はこれからが本番だ。
東海道を舞台にした「蠱毒」も、残り23人。人外の強さを誇る侍たちが島田宿で一堂に会した。血飛沫の舞う戦場に神と崇められる「台湾の伝説」が現れ、乱戦はさらに加速する―!
数多の強敵を薙ぎ倒し、ついに東京へ辿り着いた愁二郎と双葉を待ち受ける運命とは。疾風怒濤の第三巻!
感想
一巻を凌ぐ熱量が楽しい
あらすじの一行目が本作をズバリ端的に表しています(笑)。一巻では、愁二郎や無骨の引き立て役として数多くの雑魚が死んでくれていますが、概ね間引かれているので、残っているのは強者ばかりです。
今作では、残った強者同士の激突と決着が大きな魅力となっています。おそらくは最終巻の予定だったということもあるのでしょう。蟲毒のルールを逆手に取った立ち回り、弱者が強者を打ち負かすための智謀、強者同士の喰らい合いなど、胸を躍らせる展開をつるべ撃ちでやってくれるのでダルくなるところがありません。
キャラクターへのスポットライトで戦闘の魅力をアップ
キャラクターの数が少なくなっていることを活かして、今作ではそれぞれの背景を描いています。一つ一つは短くはありますが、中弛みにならない分、むしろプラスです。これにより、単なる殺し合いではなく、人生のぶつかり合いを見せてくれます。
特に上方訛りの忍者「響陣」と京八流の一人、「甚六」に魅力を感じました。響陣は一巻から飄々とした態度と頼りになる強さで物語を引っ張ってくれたキャラでしたが、今作で遂に背景が語られます。上方訛りを話すきっかけになったエピソードにはグッときました。
甚六は京八流の説明で出てきただけで、ちゃんとしたエピソードは今作が初となります。兄弟への想いと宿命に対峙する姿勢が魅力的でした。必殺技である貪狼(とんろう)の使い勝手が悪すぎるのが玉に瑕。候補者が持たされる技の中では結構な外れクジでしょ、これ。
他にも、清国から来た拳法使い「陸乾」、女の薙刀使い「秋津 楓」などの背景が語られて、キャラの厚みが増しています。作品の性質上、背景が語られると死亡フラグになりそうでヒヤヒヤしますね(笑)。
決着がつくたびに「残り、〇人」の数がガンガン減っていくので、否が応でも緊張感が高まりました。
懸念について
残っている敵も謎も少ないので、次巻でこんどこそ最後になるかと思いますが、今作を超えられる熱量が作れるのか、若干不安です(笑)。
というのも、2巻までの因縁が、結構決着がついているうえに、ラスボスと思われていたキャラクターの底が見えてきてしまっているんですよね。
上でも書きましたが、元は本作が最終巻の予定だったための熱量だったと思われるのですが、その分最終巻でどう盛り上げるのか、見当がつきません。
2025年発売予定となっているので、実写版の配信開始と合わせてくれると大変うれしいですね。
最後に
蟲毒というゲームの魅力が満載の一冊でした。やっぱりデスゲーム系は、ゲームの背景よりもゲームそのものを描いてくれた方が面白いですね。今までで一番の盛り上がりでした。
前作までの振り返りは全然ないので、本作を読む前にちゃんと復習してから読み始めることをお勧めします。
それでは、また!