こんにちは、榊原です。今日は本の紹介です。三田 誠さん著作の「魔女推理」についてご紹介します。
三田 誠さんについて
今回の記事を書くにあたってささっと便利なウィキペディアで調べたところ、「レンタルマギカ」や「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿」など、ライトノベルを主なジャンルとしている方です。
ロード・エルメロイⅡ世の事件簿は以前何冊か読んだことがありましたが、推理パートがちょっと肌に合わなくて読まなくなった覚えがあります。
あらすじ(公式ホームページより)
春。満開の桜の樹の下で、僕は「彼女」に再会した。檻杖くのり。久城という街に住まう、美しくも謎に満ちた存在。「魔女」と称される彼女の周囲では常に事件が起こり……。記憶を失った少女。川で溺れた子ども。教会で起きた不審死。不可思議な謎の原因は「魔法」なのか。あるいはそれは「嘘」なのか。くのりと僕、二人の高校生の等身大の青春を描く魔法×ミステリー、ここに開幕。
文体
主に主人公である薊拓海(あざみ たくみ)の一人称で語られます。感情移入がしやすく、探偵である檻杖くのり(おりづえ くのり)の見届け役としてうまく機能していると思います。
情景描写や心理描写は割とストレートに書いているので、読みにくくて投げ出すということはまずありません。
ちょいちょい凝った比喩表現があるので、中二成分も摂取できるかと思います。
ストーリー
拓海とくのりが田舎町で起こるか怪奇事件に関わり、その謎を解いていく、というのが流れになります。
警察や裁判を始めとする国家権力の介入はもちろん、学校すら関わりません。(社会的な意味で)大人は関わらず、あくまでも彼らの事件として始まり、ひっそりと幕が下ります。
文体が軽やかでグイグイ読んでしまうので、読んでいる最中は結構夢中になりますが、読み終わると「あれ、たいしたこと起こってなくね?」となります。
毛色は違うかもしれませんが、奈須きのこさん著作の「DDD」をちょっと思い出しました。あそこまで癖のある感じはありませんけど。
あらすじ読み返して思いましたけど、ちょっと変わった探偵の異能ミステリって、「ロードエルメロイⅡ世の事件簿」とやること結構かぶっていますね。ただ、あちらの方は学術的な説明が結構くどかった印象に対して、今作の方があっさり分かりやすく説明してくれるので、遥かに読みやすいと思います。
キャラクター
固定で登場は拓海とくのり。後は各話のゲストキャラクターで、推理小説のお約束に漏れず概ね犯人または過去に罪を犯した人です。
拓海は傍観者という立場のためか良くも悪くも薄味なキャラなので、探偵役くのりを気に入れるかどうかというのが最大の焦点となります。ぶつ切りの喋り方(例:「違う、わ」)、艶やかな黒髪、特殊能力と、これでもかというほど要素をぶっこんでいます。
この特殊能力が、他の小説と差別化しているのですが、便利過ぎてミステリ小説としては反則ではないかと思う領域に突入させています。
全体として
先に挙げたDDDや随分前になりますが、サントリーミステリー大賞読者賞の「ぼくと、ぼくらの夏」を彷彿とさせる青春ミステリーです。1巻ではひたすら事件を解いていたので、2巻以降どうするのかはちょっと気になりますが、続巻を買うかは微妙なところです。
読んでいるときは楽しいのですが、特段乗り越える試練があるわけではないし、拓海とくのりの関係性は揺るがないものとなってしまっているので、1巻で完結しているといって差し支えないんですよね。1巻の最後には最終巻を読んだかのような、清々しさすらあります。
コーヒーを飲みながら腰を据えて読むよりも、電車などで電子書籍でスラスラ読んでいくのがおススメのジャンル小説でした。
それでは、また!