こんにちは、榊原です。今日は、本の紹介です。先日に続き、水野良さん著作の「ロードス島戦記」についてご紹介します。
目次
ロードス島戦記とは?
1988年に刊行が始まった角川文庫より出版された小説です。ドワーフやエルフ、魔法の存在など、ロードオブザリングを彷彿とさせる設定が多いですが、魔物との対決ではなく人間との対決を主軸に置くなど、独自の展開となっております。
あらすじについて
山間にあるアラニア地方のザクソン村の青年、パーンは友人である神官「エト」ともに、村の近くに住み着いたゴブリンの群れを退治しに向かい、重傷を負う。
自分の無力を痛感したパーンは、村に住む魔法使い「スレイン」、スレインの知人であるドワーフ「ギム」、エトと共に旅に出る。
旅先で出会ったエルフ「ディードリット(ディード)」と盗賊の「ウッドチャック(ウッド)」も仲間に加えた一行は、あることをきっかけに、かつての英雄たちが激突する「英雄戦争」へ参加することとなるが……という感じです。
ストーリーについて
田舎の青年が、ロードス全土に名を響き渡らせる英雄になるまでを描いた物語です。TRPGが元ネタになっているからか、序盤の話はお使いイベントが多めのような気がします。
1巻のラストで、このロードス島戦記という物語が、どこに向かっていくのかを示し、2巻、3巻と続いていくほどに世界観の広がりを感じさせるというのはなかなか面白いです。
5巻あたりになってくると、若干作者も止め時を見失っている感じがあり、遂に6巻では主人公交代という中々にアクロバティックなラストを見せてくれますが、微妙にうまくいってないのが残念。この辺りは、完全にきっちりやってくれるロードス島伝説の方が巧い気がします。
キャラクター(第一巻の人物に絞ります)について
パーン:ザクソン村の青年。戦士としての訓練をしているが、未熟。融通の利かないところはあるが、真っすぐな青年
ロードス島戦記は、主にパーンの視点で描かれます。真面目ではありますが、血気盛んで向こう見ずのため、仲間にフォローしてもらっています。
旅先で出会うファーン王やカシュ―王たちに触発され、徐々に自分のすべきことを考え、リーダーとして主体的に行動を始めてからは成長が目覚ましく、見ていて楽しいです。
1巻から2巻くらいはまだ向こう見ずな部分が多いですが、どんどん研磨されて、最終巻の方では、若者を導く側に回っていて感無量です。ただ、成長し過ぎて精神的な葛藤が少なる分、物語の主人公としては動かしにくいのか、別の青年が主人公になるという残念な部分はありますが。
エト:至高神「ファリス」に仕える神官でパーンの友人。パーンの旅に同行する。
大人しく思慮深くも、パーンの無謀さに付き合うというメッチャいい奴です。ドラクエのクリフトを思い出していただければ、大体あっていると思います。ファリスの神官が使う魔法は、回復系や嘘を見抜くなどの補助的なものが多く、派手さに欠ける面はありながらも重宝するものばかりです。
ディードリット:エルフ。チンピラとけんかしている際にパーンと出会う。剣と精霊魔法の使い手。
パーンへの興味から、一行に加わるため、ディード自身に旅をする意味、闘いに身を投じる理由はあまりありません。
持ち前の精霊魔法が超強力のため、彼女がいなければ物語は成り立たないような気がします。この物語、魔法の力が強力で、熟練の戦士と熟練の魔法使いが激突したら間合いの関係で魔法使いが有利過ぎます。
ディードは中盤で既に竜巻起こせるレベルになっていますからね。剣でどうこうなるレベルではないような気が。
ウッドチャック:恩赦で20年ぶりに解放された盗賊。街でパーン一行を目にして儲け話に誘う。
盗みに失敗して、人生で最も体が充実している時代を獄中で過ごすという不遇な人です。このウッドは、盗賊である自分に対する蔑みや、パーンたちと一緒に行動しているにも拘らず評価されていないという状況に腹を立てています。
一方で、自分を仲間として認め、苦労をねぎらってくれる仲間たちに好意を感じているという、非常に面倒くさくて魅力的なキャラクターになっています。
「俺がやったことと、パーンがやったことと、何が違うって言うんだ?」という言葉は、彼の葛藤と苦しみを表したいいセリフだと思います。
スレイン:ザクソン村に住む魔法使い。パーンの求めに応じて旅に出る。
老け顔という、ロードス島戦記屈指の残念な表現で覚えられる魔法使い。初対面で実力的に高い魔法使いが仲間になるというのは珍しいのではないでしょうか。
旅についてきて欲しいという、パーンの求めに応えた理由が、かつて悪党の成敗に勧誘してきた友人の誘いを断り、その友人が命を落としたためというエピソードが好きです。
破壊の炎から、矢を弾く不可視の盾を魔力で作り出す万能タイプ。ファンタジーを描く上で、魔法使いの書き方がいかに難しいかを教えてくれるキャラクターです。
ギム:スレインを訪ねてきたドワーフ。ある秘密を抱えてパーンたちの旅に同行する。
エルフと仲が悪い、短足、剛力というドワーフのテンプレキャラクター。この人の抱えている秘密が、1巻の重要なポイントになってくるのですが、結構ギム自身が薄味のキャラクターなので、今一つ盛り上がらなかったのが残念。ディードと軽口のたたき合いは楽しくてグッドです。
最後に
色々書きましたが、古典と言うべきファンタジー小説ですし、素直に面白いので(特に1巻)、是非一読いただければと思います。近年になって、パーンたちが死んだ後の続編が刊行されましたが、2巻が出るのかかなり謎です。1巻の刊行から既に2年ほど経つんですよねぇ……。
それでは、また!