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虚淵玄が描く、予想のつかない正当派英雄譚 「サンダーボルトファンタジー」の紹介

 こんにちは、榊原です。今日は、アニメの紹介です。虚淵玄さんが原案・脚本を担当している「Thunderbolt Fantasy (サンダーボルトファンタジー) 東離劍遊紀」についてご紹介します。

目次

特徴

 虚淵さんと言えば、先日ご紹介したファントム・オブ・インフェルノ(リンク先紹介記事)のようなゲームのシナリオや魔法少女まどか☆マギカのようなアニメの脚本で有名ですが、本作は何と人形劇です。

 台湾の伝統的な人形劇である布袋劇を現代的な感覚でアレンジしたとのことです。人形劇、と言うとひょっこりひょうたん島や三銃士など、NHKの牧歌的な作品のイメージがあるかもしれませんが、本作は全く違います。

 中国風のファンタジー世界を舞台にしていて、キャラクター同士がぶつかって切り合う剣戟アクションのエフェクト、気のようなものを飛ばす遠距離攻撃をバリバリのCGで表現するなど、現代的な技術がふんだんに使われ、非常に見ごたえのあるものとなっています。また、手足が吹き飛び、血しぶきと共に人が死んでいくのも、他の人形劇と一線を画しています。

 人形についても、一見明白にお金がかかっていることが分かる鬼クオリティで、安っぽい感じは全くしません。表情や動きなど、人形ならではの独特の魅力があり、アニメとも実写とも違う、新しい表現方法となっています。

あらすじ

 かつて魔界の軍勢が人類を滅亡させようと人間界に押し寄せた戦いがあった。人々は神仙から教えを乞うて神誨魔械(しんかいまかい)と呼ばれる強力な武器群を造り、魔神たちを魔界に追い返すことに成功。

 魔界の軍勢との戦より二百年後、神誨魔械が護印師(ごいんし)と呼ばれる者によって監視・守護されている時代。西からやってきた謎の男・殤不患(ショウフカン)鬼鳥(キチョウ)が出会い、ある取り決めをするが……。

魅力

ストーリー

 殤が、護印師の少女丹翡(たんひ)と出会い、成り行きから丹翡が鍵を握る神誨魔械を狙う玄鬼衆と事を構えることになったことから物語は始まります。

 成り行きからの人助け→仲間集め→冒険→死闘→決着という、100回くらい見た流れではありますが、丁々発止の会話、見ごたえのあるアクション、一々決まりまくっているセリフの数々で、全く古さを感じさせません。

会話の魅力

 本作では、キャラ同士の会話の多くがウィットに富んでいて、見ていて面白いです。特に序盤で、雨に降られた殤が、地蔵に備えられた雨傘を持って行こうとしたとき、偶然近くで雨宿りをしていた鬼鳥とのやり取りがいいです(以下、一部抜粋)。

「粘土や木彫りならともかく、石の仏が雨にぬれても差しさわりはあるまいよ。ところが俺は、このままだと風邪を引いちまう」

「どうやら神仏を敬う心の持ち合わせはない様子だが、渡世人なら仁義ぐらいはわきまえているだろう。借りを返す覚悟はあるのか?」

「借りだと?」

「そう。お前は今御仏(みほとけ)に傘一本の借りを作ったのだ。よもや踏み倒しはするまいな」

「何が言いたい?」

「この先の旅路、誰であれ最初に出会った一人に、御仏に代わって慈悲をかけてやれ。そう誓うなら、お前も私をとがめるまい」

「わかった、わかった。慈悲でもなんでもくれてやるよ」

「必ず、だぞ」

 雨傘を持って行った殤が、早速(笑)怪しげな男たちに追われると出会い、嫌々ながらも助ける際、「この先で仏様が雨ざらしになってるもんだから、俺はその娘を手助けせにゃならん」と支離滅裂な説明をするのも爆笑でした。間違ってはいませんが、色々と端折り過ぎです。悪党にも「何を言っている?」と困惑される始末。

キャラクター

 序盤からうさん臭さトップスピードの鬼鳥、ぼやきながらも、人の好さを隠し切れない殤を中心に、兄を失いながらも、玄鬼衆の首領との対決を期す丹翡、鬼鳥と昔なじみであり、弓の名手として名を馳せた狩雲霄(しゅうんしょう)、狩雲霄の弟分で、軽いノリで、名声を得ることを望む捲殘雲(けんさんうん)など、様々なキャラクターが登場します。

 それぞれの造形や武器、戦う理由が全く異なるため、しっかりと書き分けられていますし、物語を通じて、彼らの関係性もどんどん変わっていくのが面白いです。

 アクション面で印象に残ったのは、過去の因縁から鬼鳥の命を狙う殺無生(せつむしょう)。二刀流を操り、流れるようにズバズバと切りまくる絵面がかっこよすぎます。

 複数の敵を相手取り、「どちらから死ぬ?何なら、同時でも、いいぞ?」と妙な抑揚をつけた、余裕のある言葉が最高でした。

 また、それぞれのキャラクターを演じる声優さんについても、ある程度アニメを見た方なら一度は聞いたことのある超有名な人ばかりを起用しているため、安心の演技力です。声がノイズになって没入の障害になることはまずありません。

次回予告

 それぞれの話ごとに次回予告があるのは、多くのアニメと変わりませんが、攻殻機動隊などで有名な田中敦子さんが、詩のような形で読み上げる言葉が印象に残ります。2話の次回予告を引用します。

奪い去られた太古の悲報、亡き兄を偲ぶ乙女の涙 避けて通るは君子の教え 受けて立つのが男道

 このような形で全話の予告(リンク先、予告編のみの動画)があるため、今度はどんな言い回しなのだろうと毎回楽しみになります。

イマイチなところ

キャラクターの名前が覚えにくい

 ここまでお読みいただけた方なら、同意していただけると思いますが、全員の名前が、中国風の名前であり、漢字も日常でまず使わないものが多いので、名前を掴むのが非常に難しいです。

 しかも、本当の名前と別に二つ名もあり、呼び方が人によって本名になる場合も二つ名になる場合もあり、ややこしくしています(例えば、殺無生の二つ名は鳴風決殺(めいほうけっさつ)。二つ名も音読みばかりなので、覚える端緒になりませんし。

 後半になっても、「あれ?こいつ、そういう名前だっけ?」というシーンが何回かありました。世界観のこともあるので仕方ないとは思いますが……。

終わりに

 虚淵さんは、毎作品、キャラが悲惨な目に合う作品や序盤の設定から殺しにかかっている物語が多いですが、本作においては、非常にスッキリとした、熱い物語を楽しませてくれます。

 現在はU-NEXTやHULUなどで見放題の対象であるため、まだ鑑賞されていない方は、ぜひご覧いただけると嬉しいです。

 現在シーズン3までと2本の映画がありますが、どの作品も非常に質が高く、印象に残る戦闘シーン、名セリフを楽しめます。中華風ファンタジーの新たな傑作をお楽しみください。

 それでは、また!

  

ABOUT ME
榊原 豪
榊原 豪(さかきばら ごう)です。都内在住で、主にマンガ、映画、小説、アニメ等のエンターテイメントの情報を発信していきます。 楽しいこと、面白いことを探すのが好きですし、「何を『面白い』というのか?」という考察なども結構好きです。 よろしくお願いします。