こんにちは、榊原です。先日、日生劇場でミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」を観てきたので、感想を書き散らしていきたいと思います。
前日譚となる「オペラ座の怪人」も含めて、ガンガンネタバレしていきますので、苦手な方はご注意ください。
あらすじ(公式ホームページより)
オペラ座からファントム(市村正親/石丸幹二/橋本さとし)が謎の失踪を遂げて10年。
ファントムは、マダム・ジリー(香寿たつき/春野寿美礼)&メグ・ジリー(星風まどか/小南満佑子)親子の助けを得てニューヨークに移り、コニーアイランドの遊園地に身を隠していた。ファンタズマ(見世物小屋)を経営し財をなしていたが、クリスティーヌ(平原綾香/笹本玲奈/真彩希帆)を想い続けるファントムの気持ちが満たされることはない。クリスティーヌの幸せを願い、一度は彼女への愛を押し殺したファントムだったが、その灯は消えるどころか10年という月日とともに狂おしい程に膨らんでいくのだった。
一方、ラウル(田代万里生/加藤和樹)と結婚したクリスティーヌは一児の母となり、“伝説のソプラニスト”としてオペラ座で活躍していた。しかし、一家の幸せに水を差したのは、ラウルがギャンブルでつくった多額の借金だった。この事実を知ったファントムは、謎の興行主を装い、クリスティーヌがファンタズマに出演すれば多額の報酬を払うと、話をラウルに持ちかける。
借金返済のために、ラウルと息子・グスタフを連れてアメリカへ渡ったクリスティーヌは、この計画の背後にファントムの影を感じ始めて―
ラブ・ネバー・ダイという作品について
超有名ミュージカル「オペラ座の怪人」の後日談です。劇団四季の公演で見た方も少なくないかと思います。クリスティーヌがファントムに対して恋愛感情らしきものを抱いているなど、細部は異なりますが、話の理解に問題はありませんでした。
クリスティーヌとファントムの関係性だけ理解していれば、オペラ座の怪人を観ていなくても大丈夫ですが、感情移入という点からは見ておいた方がいいでしょう。
勝手なファントム
オープニングにファントムがクリスティーヌに対する想いをしっとりと歌い上げます。冷静に考えれば、10年前に決別した小娘に中年が懸想して嘆いているわけで、相当に気持ち悪いですが、これこそがファントムです。伊達に10年前からストーカーをしていません。
この男、後述するグスタフとの賭けで、グスタフが勝てば借金帳消しを申し出るんですが、ファントムが身を寄せている見世物小屋は、メグ・ジリーが体を売って稼いでいたというとんでもなくアダルトな事情があるんですよね。
マダム・ジリーを顧みず、ファントムの歓心を求めるメグ・ジリーの公演を見もしないファントムには「いい加減にしろ」と突っ込まざるを得ません。
勝手な夫、ラウル
ラウルがファントムと賭けを行うシーン。ファントムからの提案が「クリスティーヌが舞台で歌えばファントムの勝ち、歌わずに帰ればラウルの勝ち」というもの。
これ、おかしくないですか?クリスティーヌたちは、歌うためにフランスからアメリカまで来ているんですよ。それなのに、歌えばファントムの勝ちって、どんだけ不利な賭けなんだって話ですよ。
それでも、まるで対等な条件であるかのように自信満々で受託するラウル。そりゃ、ギャンブルで身を持ち崩すわと納得でした。あと、バーテンダーがいつのまにかファントムにすり替わっていたのは、この作品最大のホラーシーンです。
勝手なクリスティーヌ
身勝手さでは、本作のヒロインクリスティーヌも負けてはいません。この人、グスタフ少年がラウルではなく、ファントムとの間にできた子供であることを今際の際に暴露しやがるんですよ(クリスティーヌは錯乱したメグ・ジリーからの銃弾によって死亡)。
グスタフ少年が今後に負うべき苦難(ラウルとファントムのどちらの父についていくべきか、というか、ラウルが今後グスタフを養育してくれるのか)に目もくれずに真実を暴露して死んでいく。ある意味、ファントム以上の身勝手さだと感じました。
終わりに
ファントムを始めとする主役がどいつもこいつも勝手すぎて、どれだけ不幸になっても「しょうがないかなぁ」という気分になりますが、「君の歌をもう一度」「負ければ地獄」「愛は死なず」など、楽曲は魅力的です。
ドロドロとした業のぶつかり合いの見ごたえもありますし、是非、ご覧いただきたいです(2025年2月24日まで公演)。それでは、また!