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突っ込みどころ多数だが、司法手続きは妙にリアル 「名探偵コナン ゼロの執行人」の感想

 こんにちは榊原です。今日は、2018年に公開された映画「名探偵コナン ゼロの執行人」の感想を書きます。

 みなさん、アマゾンプライムには加入していますか?5月に新作「ハロウィンの花嫁」が公開する関係か、現在アマゾンプライムで過去作23作が見放題となっています。

 僕は小学生の時からコナンの映画は劇場で鑑賞していましたが、第6作「ベイカー街(ストリート)の亡霊」を最後にしばらく見ていませんでした。

せっかくの機会だし、未見の作品を見てみるか、と思い、数年前に非常に盛り上がって名前だけは知っていた「ゼロの執行人」を鑑賞しました。

目次

 あらすじ(公式ホームページより)

 東京サミット開催の地となる東京湾の新施設「エッジ・オブ・オーシャン」で、大規模爆破事件が発生!

 そこには、警察庁の秘密組織・通称「ゼロ」に所属する安室透の影が。現場の証拠物に残された指紋から犯人は毛利小五郎と断定されてしまう。

 小五郎の逮捕を巡って安室と敵対し始めるコナン。事件に隠された陰謀にコナンと公安警察が近づく中、サミット開催の日は大型無人探査機「はくちょう」が火星での任務を終え、地球に帰還する日でもある事が判明する。

 果たして、迫るXデーに何が起ころうとしているのか?謎の存在・安室透は、敵なのか、味方なのか?

 概要

 漫画版のコナンは殺人を軸としたミステリーですが、映画版は見栄えのするアクションの多い造りとなっています。

 映画版で登場する巨大な建築物は破壊されるという法則にのっとり、今回は東京湾に建設された「エッジ・オブ・オーシャン」が紹介されるとほぼ同時に破壊され、期待を裏切らないものとなっています(笑)。

 現場に指紋が残されていたことを理由に、小五郎は逮捕、あまつさえ起訴されてしまいます。

 幼馴染で思い人である蘭の父親を救うため、真相を究明するのが「ゼロの執行人」の大きな軸となっています。

司法手続きについて

逮捕から起訴まで

 予告編で蘭が、「お父さんが逮捕されちゃう!」と叫んでいますが、小五郎は割と速攻で逮捕されます(笑)。

 しかも任意同行を拒んで、手で払ったため公務執行妨害で逮捕という、元警察官にあるまじき逮捕のされ方で、シリアスなシーンなのにちょっと笑ってしまいました。

 なお、この手を払ったのを皮切りに逮捕されるのは、証拠が固まっておらず令状を取るのが難しい被疑者を確保するのに使われた「転び公妨(あえて転んで公務執行妨害で逮捕する)」という悪名高き手段です。警察の歴史には、フィクションもびっくりのえげつない手段が満載なので気を付けましょう。

 通常、警察が逮捕してから48時間以内に検察に送致するか判断、その後検察が24時間以内に起訴するかを判断しますが、この両方とも小五郎は通過しており、ガチで裁判にかけられることが決定しています。

 現実に即して、とんとん拍子に追い込まれていくところに緊張感がいい感じに出ています。

公判前整理手続き

 ゼロの執行人で最も驚くべきところです。公判前整理手続きとは、重要事件で争点を整理するため取られる手続きです。双方の主張や裁判で使用する物的証拠や人的証拠をあらかじめ開示します。

 この手続きを作品に組み込み、更に犯人の絞り込みに使用したミステリーは結構珍しいと思います。

 しかも、ちらっと見せた証拠物件は現実に即して「甲〇号証」等のわかりにくい文言や「しかるべく」などの、一言さんお断りの裁判用語もきちんと載せています。

 この手続きを見せることで、ゼロの執行人のミステリーとしての格をググっとあげていますし、コナンの新しい切り口ということで、非常にいいと思います。

物語としての構造の荒さ

 小五郎を起訴したことがニュースになること、有名な探偵が被疑者であるため、依頼を引き受ける弁護人がいないことが作品中で言及しているにも拘らず、小五郎の逮捕に起因する風評被害が一切ありません。

 ここを描写すると話が長くなるうえに、作品の中核をなす人物に心無い言葉をぶつけられることで、観客の気分を不必要に害することを避けたのだとは思いますが……。

 映画版コナンは、ご都合主義の塊のような作りが多いのですが、作品内で設定した案件については、ちゃんと描写して欲しいと思いました。

(僕が見た)コナン史上最大のテロリスト

 第3作「世紀末の魔術師」で大阪の街中を停電にするという、事故発生まったなしの事案がありましたが、ゼロの執行人のIOTテロの規模は段違いです。

 洗濯機から自動車のナビまで、ネットを運用しているありとあらゆる機器が暴走し、米花市を混乱に叩き込んでいます。

 犯人は、一般人の犠牲を少なくするためとかほざいていた気もしますが、普通に人死にが出ますよ。数百人単位で。電車に詳しくないので想像ですが、モノレールの自動運転なども対象になるのではないでしょうか?

 作中では、死傷者数が明らかにされていませんでしたが、一人も死ななかったというのは、ありえない規模と内容だったため、非常に不自然に感じました(細田守監督のバケモノの子でも似たようなことを感じた覚えがあります)。

終わりに

 コナン作品に散見される「犯人が天才過ぎ」案件ですし、羽場はどう考えてもヤバいやつです。裁判官になれなくて講義する姿はもはやホラーシーンでした。

 細かいことを考え始めるときりがありませんが、小五郎の逮捕・起訴、IOTテロ、小惑星探査機の落下というコナンに対する追い込みと事件の規模のデカさで、どうでもよくなってきます。

 久しぶりに名探偵コナンの映画を鑑賞しましたが、かなり楽しめました。シンガポールを舞台にした映画では、超有名ホテル「マリーナベイサンズホテル」をぶっ壊してくれるらしいので、楽しみにしています。

 それでは、また!

ABOUT ME
榊原 豪
榊原 豪(さかきばら ごう)です。都内在住で、主にマンガ、映画、小説、アニメ等のエンターテイメントの情報を発信していきます。 楽しいこと、面白いことを探すのが好きですし、「何を『面白い』というのか?」という考察なども結構好きです。 よろしくお願いします。