書籍「飲茶の「最強!」のニーチェ」に学ぶ、価値観の転換について

 こんにちは、榊原です。今日は、本の紹介です。書籍「飲茶の「最強!」のニーチェ」についてご紹介します。この記事を読めば、「永劫回帰」「超人」というパワーワードについて学べ、繰り返す日常から脱却するヒントになります

目次

 概要~最強のニーチェとは~

本の外観

 会話形式でニーチェの哲学について学ぶ哲学書です。先日ご紹介した、「正義の教室」と同じ飲茶さんの著書となります。この人は、難しい考え方や概念を哲学を全く知らない人にでも伝えるのが本当にうまいです。

 いずれ紹介したいのですが、「哲学的な何か、あと科学とか」という本では、ドラえもんとのび太の会話形式がどこでもドアの仕組みを巡って哲学的なやり取りをする話があるのですが、この話がおぞましくて魅力的です。

 サラッと説明すると、この「哲学的な~」におけるどこでもドアは、あるA地点からB地点に移動するため、次のような手順を踏みます。

 ①A地点にいる人物のコピーをドアを潜り抜ける時点でする(記憶もコピー) 
 ②コピーした人物は、B地点のドアから出てくる
 ③A地点のコピー元は削除する(死ぬ)

 B地点から出てきたコピーは、コピー元と全く同じなのですから、コピー元が削除されても何の問題もないではないか、というドラえもんに対し、のび太が四苦八苦して否定しようという感じです。結末まで含めて衝撃的なので、ぜひご覧いただきたいです。

 脱線しましたので話を戻しますと、今回紹介する「飲茶の~」は、ニーチェという結構、というか相当に難しい哲学書について、分かりやすく、かつ、面白く説明した作品となります。

 読みやすさについて

 哲学書って、難しい言葉回しで、人を煙に巻くような抽象的な内容だというイメージがあると思います。

 でも、この本は違います。登場人物「あきほ」が、日常の不満や諦観を「先生」に相談し、先生はニーチェの考え方により解決を図るという対話形式になっているので、とても読みやすいです。

 このあたりは、岸見 一郎さん, 古賀 史健さん著作の「嫌われる勇気」にちょっと似ているかもしれません。この本は、人生に迷う「青年」と、その問いに答える「哲学者」の対談形式で、徐々に青年の考えが変わっていく、という物語形式になっています。

 本作は「嫌われる勇気」よりも、だいぶポップな造りになっています。二人は気の合う友達のような会話をして話を進めるので、ニーチェ云々は置いておいても、読んでいるだけで楽しい気持ちになれます。

 先生:実際のところ、あきほちゃんはどう思う?「自分の人生に意味がある」と思う?

 あきほ:どうやら先生は、意味なく人生を終わらせたいようですね……。

 哲学的な問いのはずなのに、どこかおかしいやり取りでぐいぐい読まされます。こういう丁々発止のやり取りが好きな方は、凄く楽しめると思います。

 既存の価値観からの脱却について

 日々を生きる中で、「挨拶をしなければならない」「結婚をしなければならない」「仕事ができなければならない」という価値観の中で苦しんでいる人がいると思います。

 でも、そういう価値観と言うのは、社会から与えられた意味ではないでしょうか。何となく作られてきた、突き詰めていくと自分でも大事だと思っていない価値観に自分を当てはめて、達成できない自分を卑下するというのは非常に悲しい話ではないでしょうか。

 この本は、一度そういう価値観に、何の意味もないということを突きつけてきます。もちろん、楽になるだけではなく、その後に待っているのは、虚無という苦しみもあるのですが、更にそこからあがるためのヒントもくれます。

有名パワーワードについて

 末人について

 社会に押し付けられた価値観から自由になって、本当は体が軽くなるはずなのに、それだけだと「何の目標もなく、トラブルを避けて、ひたすら暇をつぶすだけの人間になる」とニーチェは警告していて、これが「末人」です。

 実際、押し付けられた価値観であっても、それに熱意を込めていた時期は確かにあったので、それを手放すと非常に虚無的な世界がやってくるんですね。

 熱も感動もなく、何となく生きて、何となく人生を終わっていく。自分がそうなってしまっているのではないかと思って非常に考えさせられました。

 永劫回帰について

 人生が、無限に続くものであり、様々な出来事は、全く同じまま永遠に繰り返すという考えです。これによって、唯一性などの価値が奪われる考えが、「永劫回帰」です。

 その中でどうやって楽しく生きていくのか。それは、「今この瞬間」に起きていることであると説明しています。例えば、手に触っている風の感覚、床を触っている脚の感覚、呼吸の感覚など、一瞬一瞬を肯定していくことが重要だとこの本では説明しています。

 超人について

 キャプテン・アメリカ的なものを想像していましたが、この言葉、ざっくり言うと、仕事とか、恋愛とか、今ある価値観が崩れた時、自分の人生を肯定して立ち上がる人間のことを指すんですね。

 作者の飲茶さんが、「これからの人間は超人になるしかない」という趣旨の言葉が非常に印象的でした。

 まとめ

 読みやすく、楽しく、勉強になる哲学書です。全く哲学を勉強したことがない人でも楽しめますし、読み終わった後は、違う世界が開かれるような感覚を覚えると思います。

 高校の倫理の時間って、単純にワードだけをあっさりした概要と共に詰め込むので、こういう話って、一つ一つ話を聞いて行けば相当面白いと思うんですけどね。最近文庫版も発売されたようなので、ぜひご一読ください!

 それでは、また!

ABOUT ME
榊原 豪
榊原 豪(さかきばら ごう)です。都内在住で、主にマンガ、映画、小説、アニメ等のエンターテイメントの情報を発信していきます。 楽しいこと、面白いことを探すのが好きですし、「何を『面白い』というのか?」という考察なども結構好きです。 よろしくお願いします。