こんにちは、榊原です。今日は、本の紹介です。福井晴敏さん著作の「OP.(オペレーション)ローズダスト」を紹介します。
目次
福井晴敏とは?
スピード感のあるアクションと、濃厚で詳細な情景描写の文体が特徴的な作家さんです。おそらく一番有名なのは「ガンダムUC」の原作だと思います。
自分を見失って自堕落に生きる中年と、才能に溢れてはいるものの、人間として未熟な青年が出会って、互いを補う作品は、「ボーイ・ミーツ・オッサン」として親しまれて(?)います。
福井さんについては、以前「川の深さは」という本の紹介を書いたので、そちらをご覧いただけると嬉しいです。
あらすじ
巨大企業「アクト・グループ」の役員〇〇が殺された。警視庁公安部の並河警部は、防衛庁より派遣された丹原と捜査を行うよう命じられる。
能面の中に激しい何かを宿す丹原に危ういものを感じながらも並河は犯人を追うが、丹原は並河を置いて単独行動に出る。丹原に追いついた並河は、爆破事件の犯行グループ「ローズ・ダスト」と丹原の会話を聞き、両者に因縁があることを知る。
日本という国家への「復讐」を企図するローズ・ダストを並河は丹原と止められるのか。
設定について
福井さんの作品の多くに登場するDAISという組織が、本作にも登場します。平たく言えば、防衛庁所属の非公開組織であり、特殊部隊やスパイのような組織です。
過去作を呼んでいると、関連性が分かってより楽しめますが、本作は独立した物語となっているため、特に知らなくても楽しく読めます。
興味があれば、「川の深さは」「TwelveY.O.」「亡国のイージス」を読んでいただければと思います。
ストーリーについて
この物語は、ある事件での過ちがきっかけで、自棄になっている並河警部から始まります。導入部分で、若い同僚との気概の違いを世代の違いと決めつけて向き合おうとしない自分を、「若い頃の自分が一番軽蔑していたタイプの大人」と卑下しています。
福井さんは、作品全般がそうなのですが、ダメな中年になってしまったと実感するキャラクターを描くのが非常に巧いです(笑)。
その並河が、丹原と出会い、ローズ・ダストが引き起こす事件で過去の過ちを克服して前に進もうとする心の動きと熱さが胸を打ちます。
危険を冒して丹原を助けるか、穏やかではあるものの、負い目を感じる生活に戻るかの2択を迫られた時に「おれは、もうあきらめたくないんだ。これ以上、背中丸めていきたかねえんだ」と立ち上がる姿は涙なしには読めません。
丹原もまたかつての過ちにより自罰的な生活を送っていましたが、並河や並河の娘である恵理との出会いにより、少しずつ前向きになっています。
かつては親友と呼べる間柄ではあったものの、ローズ・ダストのリーダーとして日本という国家に牙を剥く入江一功との再会と死闘は、アクション的な暑さがあります。
特に、音が反響するビルの中で互いを言葉で否定しながらの戦いは、完全にガンダムのア・バオア・クー内部でのアムロとシャアの雰囲気が醸し出されていて最高に熱いです。
入江の「お前と同じだよ。この国は何も守れない」という嘲笑に対し、「本気のセリフなら、お前こそ古い言葉に絡めとられている」と叫び返すのはガンダムシリーズの最終戦お馴染みの、罵り合いながらのビームサーベルぶつけ合いを彷彿とさせます。
この熱と意地のぶつかり合いが、福井さんらしい、文量を使ってじっくりと濃厚に描かれているのが素晴らしいです。
終わりに
防衛庁のスパイ組織、5人のテログループと因縁、かつての友人との死闘、無くしたものを取り戻す自分等、かつて男の子だった人にはビシバシと刺さるキーワードだけで構成されたような物語です。
メタルギアソリッドの熱い物語が好き、ガンダムのような宿命の対決が好きというような人で、本作を読んでいないのは本当にもったいないです。
文庫で3冊なので文量は結構多めですが、クライマックスシーンの熱量が爆発的に熱いです。男のロマンで構成されているような冒険活劇を、ぜひぜひご覧ください。
それでは、また!