こんにちは、榊原です。今日は本の紹介です。珪素さん著作の小説「異修羅」についてご紹介します。基本的にネタバレはありませんが、カバー裏のあらすじ程度の内容には触れますので、ご注意ください。
最初に結論だけ書くと、粗削りで突っ込み要素も多々ありますが、それを補って余りある力強さを感じさせる面白い作品です!
目次
異修羅とは?
「このライトノベルが凄い2021」で単行本・ノベルス部門と新作部門をダブル受賞した小説です。その割には、どこの本屋も1巻は切らしていたので、存在を知ってから読むまでに結構かかりました。
この辺、受賞した作品は平積みしておくとかないんでしょうか?せっかく注目を集めても、本屋に並んでいなければ意味がないような……。
あらすじ
魔王が殺された後の世界、そこには、魔王を殺しうる英雄だけが残った。異能を持つ者、異世界からの来訪者、人ならざる種族。様々な事情はあれど、彼らに共通するのは、人知を超えた力を持つこと。
その力をぶつけ合い、最強を証明しろという世界の呼び声に応え、彼らは剣を取る。全員が最強、全員が英雄。たった一人の「勇者」を決めるための物語、ここに開幕。
魅力
①ストーリー
魔法あり、異種族あり、魔王ありと、魔王が既に殺されていることを別にすれば、結構よくあるファンタジーものです。ドラクエとかプレイした人には一発で設定が理解できるかと思います。
中盤くらいまでは、英雄たちの能力紹介や背景事情について説明していくので、一巻はキャラ紹介に終始するのかなと思いきや、ゴリゴリに殺し合うのでびっくり。
どんなに主役級の扱いで出てこようとも、サクッと死ぬのがこの作品の緊張感を出すのに一役買っていると思います。
それぞれの能力の見せ場や人間関係などが丁寧に書かれているので、感情移入はしやすいと思います。ただ、キャラクターの特性や関係性にページを割いている関係で、どうストーリーが展開していくのかが読みづらいです。
②キャラクター
この作品最大の魅力です。ぶつかり合う強者たちの能力をちょっと紹介します。
ソウジロウ:剣士。相手の殺し方を知覚する。常人離れした剣術と体術で、いかなる物をも両断する。
アルス:鳥竜。空中最速。3本の腕に、それぞれ自身で集めた武器を使用する。
キア:魔法使い。言葉一つで、世界の理さえ捻じ曲げる。詠唱を必要としない。
こんな感じの常軌を逸した能力の持ち主同士がぶつかるシーンが山盛りなので、非常に楽しいです。能力バトル物が好きな人は、結構気に入ると思います。
彼らだけではなく、脇を固めるキャラクター達も単なるモブではなく、それぞれの戦う理由、叶えられないと知りつつも願わずにはいられない望みなど、厚みのあるキャラクターが揃っています。
僕の一押しは、サブキャラの「ハルゲント」という将軍です。彼は、鳥竜の英雄アルスと因縁があるキャラクターです。秀でた能力があるわけではないのに、アルスに恥じないように高みを求めます。
自分が英雄に並びたてる器ではないことを知っているにも拘らず、悪の定義を「自分を裏切ること」として、愚かだとわかっている行為に命を懸けていきます。
そういうハルゲントをアルスは好ましく思っていて、「尊敬できる」としているのも面白いです。彼らの因縁が今後どのように語られるのか、楽しみです。
マイナスポイント
①名前が覚えにくい
ファンタジー系の宿命とはいえ、全員の名前がカタカナである上に、登場人物が相当多いので(1巻だけで10人くらい)、相関図を頭の中で構築するのにかなり手こずります。
作者もそれをわかってか、2つ名(例:柳の剣のソウジロウ)を用意しているのですが、名前を覚えるのにあまり役に立っていないような気がします。
おまけに、せっかく関係性や背景事情を知った後でも、そのキャラクターを容赦なく殺しに来ますからね。ここは、作品の性質上仕方ないのだとは思いますが……。
②視点の切り替えが多い
章立てが結構細かく、その度に視点が変わり、その度に感情移入先も変えなければいけないので、読んでいて結構疲れます。ある程度キャラクターが出揃ったら解消されるとは思いますが、少なくとも1巻で語るには盛り込みすぎかもです。
一人のキャラクターの紹介が終わったと思ったら、その前に背景事情を語ったキャラクターに戻ったりもするので、ちょっと混乱しました。
最後に
受賞も納得の魅力的なキャラクターと設定で織りなす英雄譚です。ただ、このスピード感でどこまでやれるのか、この物語がどこに向かっていくのかがまだ全然読めないので、二巻も引き続き楽しみに読んでいきたいと思います。
それでは、また!