こんにちは、榊原です。今日は本の感想です。瘤久保慎司さん著作の「錆喰いビスコ」をご紹介します。
目次
錆喰いビスコとは?
2018年から刊行されたライトノベルです。現在の既刊は7で、2022年1月からアニメ化の予定です。ジャンルとしては、冒険小説になるかと思います。
あらすじ(公式サイトより引用)
砂と錆が覆う死の大地にキノコを咲かす、最強のキノコ守り・赤星ビスコ。城砦都市・忌浜で愛される美貌の少年医師・猫柳ミロ。
少年たちは、いかなる錆もたちどころに溶かし、健康を取り戻すといわれる伝説の霊薬キノコ≪錆喰い≫を求め、波乱の旅に飛び出す。二人の少年の出会いが、≪錆び風≫が死を運ぶ世界を動かす――!?
三幕構成
第一幕:ビスコとミロの出会い
第一ターニングポイント→
第二幕:錆喰いの発見
第二ターニングポイント→黒川への敗戦
第三幕:再戦
物語の構造について
タイトルは「錆喰いビスコ」ですが、視点はどちらかと言うと相棒の「ミロ」から物語が描かれます。ビスコが物語当初から凄腕のキノコ守りであるのに対し、キノコ守りの知識や技術がないミロの視点の方がわかりやすいからだと思います。
思慮に欠けるけれど勢いがあり、直感に優れるビスコと論理的に考えて行動に移すミロのバディものになっていて、キャラが立っています。
物語としては、錆に覆われて崩壊気味の世界をビスコとミロが冒険し、世界を崩壊に導いている錆を根絶するための処方を発見し、忌浜を支配する知事と対決するシンプルなものです。
物語の魅力としては、矢を放つとキノコが咲くというダイナミックなアクションとビスコとミロが冒険の中で絆を深めていくドラマです。
キャラクター
赤星ビスコ:主人公。キノコを咲かせる弓術を操。育ての親である「ジャビ」を救うため錆を止める霊薬「錆喰い」を求める。
ネガティブ感情無しの竹を割ったような性格の主人公です。ここまでストレートなキャラクターも珍しい気がします。ビスコ、というお菓子が元ネタの名前(劇中で言及されます)も覚えやすくてナイス。
ジャビは育ての親兼師匠でしたが、ジャビが病魔のために旅ができなくなってからは、ミロが相棒兼弟子になります。何かジェダイみたいです。
死を覚悟して戦地に行く際に、傷ついて眠ったミロにかける言葉は今作屈指の名場面です。
猫柳ミロ:ビスコの相棒。卓越した医術でビスコをサポートしつつも、キノコ守りとして急速に成長する。
前述しましたが、今作はビスコというよりもミロの成長譚として描かれています。ビスコと違って論理的に物事を観察したり考察するため、読者が分かりやすいような配慮をしてくれる非常にありがたいキャラクターです。
また、修めた医術と他者の健康を気遣う優しさで、他のキャラクターとの人脈を広げていくのは、圧倒的な力と粋な背中で魅せていくビスコとは違った魅力があります。
傷ついたビスコに代わって黒川と対峙し、ビスコの口調を真似て戦いに挑むところが最高に熱いです。
黒川:忌浜知事。兎の仮面を被った親衛隊に指示し、ビスコを執拗に追う。
本作の悪役にして、ぶっちぎりのMVPです。ダークスーツで細身、帽子付きという外見もいいのですが、マンガやアニメに造詣があると思われる発言やビスコの殺害に対する病的な執着でキャラが立ちまくっています。
人質と霊薬の交渉に「俺の漫画コレクションもつけるよ!火の鳥とか。スラムダンクもあるぞ。……これ、9巻までしかないのか。」と言ったり、ビスコを絶体絶命の窮地に追い詰めるシーンで「お前に四次元ぽっけもない。お前にはバタコさんもいない。それで、どうしてそんな顔ができるんだ」と言うなど、いい意味で頭が悪すぎます。
そうかと思えば、最終戦においては、「俺もお前と同じだ。お前が正しいからって、はいそうですかって死ねないのは俺も同じだ」と粘るなど、こちらにも共感できる物言いで物語を熱く盛り上げてくれます。
倒すべき悪役のキャラが立っているというのは、楽しい物語の要素の一つではあるのですが、この黒川は、僕が読んだ4巻までにおいて最もいいキャラしています。
最後に
ダイナミックなアクションと、立ちまくったキャラクター(特に黒川)が魅力的な、新しい冒険譚です。
アニメ版が面白くなるかはわかりませんが、丁々発止の会話の面白さ、心理描写の巧みさは小説の方が伝わってくると思うので、お時間があるときに一度手に取ることをお勧めします。
それでは、また!