映画

声を上げる意味とは 映画「最後の決闘裁判」について

 こんにちは、榊原です。今日は映画の紹介です。10月15日より公開開始のリドリー・スコット監督最新作「最後の決闘裁判」をご紹介します。この記事は、まだこの作品をご覧になっていない方で、この映画に時間とお金を使うか迷っている方に向けて書きました。予告編程度に話は明かしますが、ネタバレはありません。

目次

 結論

 見る価値大いにありの傑作!ただ、女性は不快になる恐れがありますので、ご注意!という感じです。

 あらすじ(公式ホームページより一部抜粋)

 中世フランス──騎士の妻マルグリットが、夫の旧友に乱暴されたと訴えるが、彼は無実を主張し、目撃者もいない。​真実の行方は、夫と被告による生死を賭けた“決闘裁判”に委ねられる。

 決闘文化について

 「決闘」と聞くと、西部劇のように銃で撃ちあうものや、サーベルで切り合うもの、様座なスタイルがあります。ヨーロッパにおける決闘は、キリスト教的な神明裁判と王が制定した法による公権力の裁判があるようで、この映画で行われる決闘は前者のものです。

 神明裁判とは、要するに「正しければ神が味方して勝者になれる」というものですが、あまり神の存在はピックアップされることなく、勝者は命を名誉を、敗者は汚名と死を与えられる、極めて非合理なものだったようです。

 余談になりますが、国に認められていない個人間の決闘はヨーロッパでかなり発生していて、決闘禁止令を制定しても止まらなかったようです。この辺りは、藤田和日郎先生の「ゴーストアンドレディ」というマンガに描かれています。
 スウェーデンでは、決闘場所に死刑執行人と処刑台を用意して、現れた当事者2人に「勝利した方は違法の決闘により、ここで処刑する」と脅して和解させたエピソードがあるほどだそうです。

 ストーリーの魅力

 決闘をするにあたり、メインとなる原告であるジャン、性的暴行を受けたと訴えるジャンの妻マルグリット、被告のル・グレについて語られるのですが、これが過剰なまでに濃厚です。

 彼らが何を考えていて、どういう人間なのか、それぞれの視点から語られるので、感情移入しまくりです。上映時間2時間30分の内、約2時間が決闘の経緯なので、ちょっと長いと感じる方がいるかもしれませんが、その分クライマックスでは非常に盛り上がります。

 また、「女は子どもを産まなければだめ」「女は男の所有物」という前時代的な価値観がバリバリ出てきますので、この辺は不快になる人が多いと思います。

 編み物をしている姑にマルグリットが「何を作っているんですか?」と世間話程度に聞いたら、姑は「実りは期待できないわね」と返すシーン(子どもができないことを揶揄)など、胃が痛くなるやり取りも所々に散りばめられているので、耐性がない人も控えたほうがいいかもしれません。

 今の現代にも配慮がないことを平気で言う人は存在するので、優しくなろうと思える点ではいい映画です(笑)。

 戦闘描写・性描写について

 主人公格2人が騎士(内一人は従騎士)だけあって戦闘シーンは多めなのですが、剣で「斬る」というより、「殴る」または「刺す」という感じで、非常にリアルな「人を殺す」描写となっています。

 特にクライマックスは、感情移入した2人が、一つの真実を賭けて命をぶつけ合うという演出が手に汗握るもので、腕組みしていた手に力がこもってしまいました。隻腕の剣士「藤木」と盲目の剣士「伊良湖」が激突するシグルイという漫画を思い出します。

 また、問題の性的暴行を受けたというシーンは、尺をそれなりに取っていて、かなりキツイものになっています。この作品、PG-12(12歳未満は保護者の助言・指導が必要)だそうですが、R15+でもよかったのではないかと思います。

 まとめ

 一本の凄まじい物語を見たという満足度では、今年ベストと言えるほどに高いと思います。潤沢な予算があるのか、衣装や城などの舞台設定の精密さ、アクションのリアルな描写、それぞれに譲れないものがある主要人物など、見どころは満載です。

 映画館で見ることに意義がある一本だと思います。しっかりと睡眠をとった翌日に、ぜひご覧ください。

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榊原 豪
榊原 豪(さかきばら ごう)です。都内在住で、主にマンガ、映画、小説、アニメ等のエンターテイメントの情報を発信していきます。 楽しいこと、面白いことを探すのが好きですし、「何を『面白い』というのか?」という考察なども結構好きです。 よろしくお願いします。