こんにちは、榊原です。今日は、マンガの紹介です。藤田和郎先生の「ゴーストアンドレディ」を紹介します。昨日、決闘裁判を見に行った時、この漫画を思い出しました。この記事は、サクッと、爽やかに、楽しく読めるマンガを探している人に向けて書きました。
目次
~漫画家 藤田和郎について~
「うしおととら」「からくりサーカス」を代表作とする、主に週刊少年サンデーで連載している漫画家です。作品の要素としては、熱血・友情・根性が大盛り。ロジックで相手を崩す展開もありますが、とにかく勢いが凄いです。
絵柄は、少年漫画らしい画風なのですが、若干絵画のような癖のある感じがあるので、この辺は人を選ぶかもしれません。
~あらすじ~
時は18世紀。国はフランス。とある劇場で、生者の女と死者の男が出会う。女の名前はフローレンス(フロウ)。夢を追えず、悪霊が見える自分に絶望して死を望む。男は生前の名を覚えておらず、グレイと名乗る。
フロウはグレイに自らの殺害を依頼する。神からの使命を達成せず生きることに意味はないと。グレイは、最高のタイミングで悲劇を演出するために、女が道を進む手助けをして翻意を促す。
立ち塞がる様々な困難と、それを乗り越えようと足掻くフロウ。それを見届けるグレイ。二人が歩む旅路の果ては……。
作品の魅力について
大きくは、3つです。
- ①短い
- ②ストーリーが熱い
- ③セリフがオシャレ
①短い
上下巻で完結するため、非常に短い時間で読むことができます。藤田先生の他の作品は、うしおととら33巻、からくりサーカス43巻、最近完結した双亡亭壊すべし25巻と、かなりの巻数となります。
短いからと言って、ストーリーが端折られているとか、描写部色という印象は全く受けません。主人公である劇場に憑りつく亡霊「グレイ」と自らの殺害をグレイに依頼する「フロウ」の2人の関係性と、彼らが辿る運命に物語を絞っているため、論点が散らからないんです。
見せ場の連続で、中だるみがほぼないので、短い時間で、サクッと楽しるのは本作の大きな魅力です。
ストーリーが熱い
死を望んでいたはずのフロウが、グレイとの出会いをきっかけに立ち上がり、自らの夢に邁進しようとする姿や、フロウの死という悲劇の演出をするつもりで手を貸していたグレイが、フロウに感化され、徐々に態度を改めていく姿が見ていて気持ちいいです。
また、戦争の悲劇、惨禍の中で生きる人間の逞しさを、テンポよく書いているのも凄いです。こういうテーマを取り上げると、大体重くなってしまいそうですが、この漫画では、それを感じさせません。
中でも珠玉なのは、生前の自分と今の自分を受け入れて、寂寥感を漂わせつつも最後の決闘に挑むグレイの姿です。ここは、オープニングからグレイが口ずさんでいた口上(後述)を使い、読者側も、本当に全てを使い尽くす最後なんだということが伝わってきて燃えます。
③セリフがオシャレ
生前から芝居好きだったグレイは、事あるごとにシェイクスピアの作品からセリフを引用するのですが、それが作風と相まって、洒落ています。
怒り→「俺の手が海を血で染め、海の緑を真っ赤にするだろう」(マクベス)
退屈→「明日、明日、また明日と日々が過ぎゆく」(マクベス)
など、随所にちりばめられています。また、フロウが家族に夢をけなされた時、「傷ついたことのない者が、人の傷跡を笑える」とロミオとジュリエットのセリフを引用して啖呵を切り、グレイも引用に気づき興味を覚えるなど、引用が効果的に使われていて新鮮です。
中でも随一のセリフは、グレイが決闘に挑む際に上げる口上。共通する部分もあるのですが、気紛れから手を貸す場面、興味を覚え始めた場面、全ての因縁に決着をつける場面で異なる口上を使っており、それがドラマの盛り上がりと相乗効果を生んでいます。
この記事のタイトルである「君に私を殺害する権利を与えよう」という言葉は、口上の共通部分なのですが、サーベルと短銃という、決闘スタイルにピッタリとはまっていて非常にかっこいいのです。実人生では100%使えないクサ過ぎるセリフですが。
まとめ
短い時間で感動でき、読み終わった後は、シェイクスピアの本を読んでみたくなるような作品です。毎日、仕事や勉強、遊びに忙しくても、本作はその合間を縫って読む価値ありの1作です!ぜひご覧ください!