こんにちは、榊原です。今日は本の紹介です。池上彰さん著作の「昭和の青春 日本を動かした世代の原動力」についてご紹介します。
本の概要
「そうだったのか!〇〇」などの著作でお馴染みの池上さんが、昭和という時代について、学生運動、高度経済成長、文化・社会風俗など、様々な観点から振り返ります。池上さんの著作は、「知らないと恥をかく世界の大問題」のような世界情勢の背景を説明する真面目本と、「世界史を変えたスパイたち」のようなエンタメ本にわかれますが、今回の本はややエンタメよりです。
わかりやすい説明は、背景事情や当時の空気を知らない人間でも十分に理解できるうえに、オイルショックやビートルズなど、ニュースに興味の薄い人でも喰いつく話題にページを割いています。
反面、一つ一つの項目はどうしても薄くならざるを得ません。例えば、前半で紹介している学生運動の興亡については、元外交官の佐藤優さんとの共著である「日本左翼史」で4冊出版して濃密に語っています。興味がある分野については、他の著作などで調べた方がいいでしょう。あくまでも、昭和という時代を様々な観点で切り取ることが趣旨ですしね。
なお、この学生運動の章で、以前鑑賞した「三島由紀夫VS東大全共闘50年目の真実」が取り上げられてニヤリとしました。三島由紀夫の力強さと、学生が語る抽象的な議論の意味不明さを感じられるいい映画だと思います。アマゾンプライムで無料なので、大掃除中につけると楽しめるかと。
「昭和」という時代の酷すぎる様相
「淡を吐く人が多いため、駅に淡壺があった」「女性社員はクリスマスケーキに例えられ、募集する際の要項に『容姿端麗』という条件」など、今を生きる僕たちからするとマジで酷ぇと顔をしかめる状況がてんこ盛りです。
働けば働くほど所得が増え、三種の神器を始め、どんどん活性化していく社会に希望を見出した人も多いとは思いますが、こんな時代に全然行きたくないのは僕だけじゃないでしょう。特に電車通勤とか、押し子(満員電車に人を押し込む)アルバイトがあったとか……冗談じゃありませんね。
ただ、それが詰まらないかというと全くそうではありません。当時のとんでもエピソードや価値観は、下手なSFよりもよほど異世界感に溢れていますし、選挙特番のインタビューで「選挙なんだけど金が届いていないんだ」と答えるなど爆笑(失笑?)エピソードもあります。
「青春」度は低い
タイトルに「青春」とついていますが、池上さん個人の青春エピソードは薄め……というか、ほぼ皆無です。学生運動で志望校の入試がなくなった話、政治家は嘘などつかないと思っていた話など、個人的なエピソードも多少ありますが、感情的な動きはありません。
良くも悪くもなんですけど、この人の文章って、極力自分の主観を排そうとしている感があるんですよね。あくまでもジャーナリストは事実を伝えて問いかけるまでが仕事、ということなのでしょうか。
学びとして
市井の人をお腹いっぱいにしてあげたいと、安さを重視した経営を展開していたダイエーが、食べる者に困らない時代が来て、買い物そのものをエンタメ化できずに不振に陥ったり、金のばら撒きと人心掌握術でのし上がっていった田中角栄が、その金が原因で失脚したりと、歴史的な事実から学べる点は数多いと思います。
また、価値観の移り変わりを見ることで、今の価値観も絶対ではないという認識を得られる点は大きいと思います。
終わりに
集中力を必要とせず、電車の中などでパラパラ読めるエンタメ本です。個人的には日本左翼史のような、熱い思いが過激化する闘争の中で、闘争そのものが目的となってしまうようなドラマ性がある方が好きですが、これはこれで面白いです。
サクッと読んで、今の時代の良さを実感するのにおススメの一冊です。それでは、また!