こんにちは、榊原です。今日は、映画の紹介です。土井祐泰監督、小栗旬・星野源主演の映画「罪の声」を紹介します。脚本・役者の力が光る、重厚なサスペンス映画です!ネタバレ警告後にネタバレします。
目次
作品概要(キャスト等)
1980年代に実際に起こった未解決事件「グリコ・森永事件」を下敷きに、塩田武さんの著作を映画化した作品です。
この作品、監督よりも脚本の野木さんがクローズアップされていたので調べてみると、「逃げるは恥だが役に立つ」「重版出来!」など、ドラマに疎い僕でも知っているレベルの超有名作を何本も手掛けているそうです。
キャストを見てみると、別のドラマで同じ人を起用していることが多く(本作では星野源さんと橋本淳さん)、良く知っている役者と仕事をしたいタイプの人かもしれません。ダークナイトのクリストファー・ノーラン監督もそういう傾向がありますし。
あらすじ(公式ホームページより)
35年前、日本中を巻き込み震撼させた驚愕の大事件。食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件は、誘拐や身代金要求、そして毒物混入など数々の犯罪を繰り返す凶悪さと同時に、警察やマスコミまでも挑発し、世間の関心を引き続けた挙句に忽然と姿を消した謎の犯人グループによる、日本の犯罪史上類を見ない劇場型犯罪だった。
大日新聞記者の阿久津英士(小栗旬)は、既に時効となっているこの未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、取材を重ねる毎日を過ごしていた。 一方、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)は、家族3人で幸せに暮らしていたが、ある日、父の遺品の中に古いカセットテープを見つける。
「俺の声だ―」
それは、あの未解決の大事件で犯人グループが身代金の受け渡しに使用した脅迫テープと全く同じ声だった!
やがて運命に導かれるように2人は出会い、ある大きな決断へと向かう。
「正義」とは何か?「罪」とは何か?
事件の深淵に潜む真実を追う新聞記者の阿久津と、脅迫テープに声を使用され、知らないうちに事件に関わってしまった俊也を含む3人の子どもたち。
昭和・平成が幕を閉じ新時代が始まろうとしている今、35年の時を経て、それぞれの人生が激しく交錯し、衝撃の真相が明らかになる ――
本作の魅力
①ストーリー
実際に起こった事件に裏打ちされているギンガ萬堂事件は、警察やマスコミへの挑戦状や企業への脅迫など、劇場型犯罪となっており、これが非常に不可解で面白いものになっています。
僕は、下敷きにしているグリコ・森永事件については、狐目の男が犯人グループの一人と目されていたこと、未解決であること程度の知識しかありませんでしたが、特に問題なく話に入っていけました。
ひょっとしたら、予習した方が理解しやすいかもしれませんが、その分鑑賞の際の緊張感がなくなってしまうかもしれません。
何故犯人の行動の理由、狙い、曽根以外の声の持ち主(曽根以外にも2人いる)などについて、新聞記者である阿久津サイドでは、資料から当時の関係者を探し出して話を聞き、曽根サイドでは、録音テープにより自分の叔父が犯人と推測を立て、叔父を知る者から事件に近づいていきます。
阿久津サイドでは、記者の立場から、客観的な事実から事件に踏み入り、ある意味被害者である曽根サイドでは、心情的な部分で事件により人生を狂わされたものの声を聴く。この辺は、それぞれの役割に住み分けがスッキリできていてわかりやすいです。
特に、阿久津と曽根が出会ってからは、一気に事件の核心に迫り、断片しか見えていなかった事件の全貌が解明されていく経過がパズルのピースがはまっていくような感覚があり、構成のうまさを感じました。
②登場人物
他人の人生に踏み入り、事件をエンタメ化することに葛藤を抱く新聞記者の阿久津と、真相を調べることに抵抗を感じつつも、義務感で調査をする曽根の関係性が魅力的です。
阿久津は独身で服装にさほど気を遣わず、曽根は妻帯者でテーラーという職業上服装に気を遣うなど、余り共通点のない二人が、事件を捜査する相棒のような関係になり、互いが互いを認め合うような仲になっていくのが見ていて楽しいです。
この二人以外にも、阿久津に文句を言いながらも助言をする上司、やたらと口の軽い料亭のおじさん、何か大物間を漂わせる証券会社の男など、登場人物を記号的キャラクターではなく、一人一人が自分の考えを持っている人間として描けていると思います。
③演出
二人の服装に対する関心について、セリフで示すのではなく、ジャケットの袖ボタンが取れかけているのを曽根が指摘し、気づいた阿久津が袖ボタンをちぎってしまうという絵で見せるなど、視線や仕草で関係性や心情を表現するのが本当に巧いです。
また、それぞれの切り口から事件を追うパート・二人で事件を追うパート・真相パートという形で、物語の語られ方がパートごとに分かれているのも面白いです。
まとめ
上映時間2時間半ほどとやや長尺ではありますが、それに見合う満足感がある映画です。紆余曲折を経て、ついに辿り着く真相と、それぞれが抱く「罪」とどう対峙して乗り越えていくのか、ぜひご覧ください。
それでは、また!
ここからネタバレなので、気を付けてください。
声を使用されたことがきっかけで、35年もの間、地を這うように生き延びた生島の姿が本当にきつかったです。ある種同じ境遇でも、曽根は妻帯して家庭を営んで、真っ当と言える人生を送っているのに……。これは、曽根には何の責任もないのに罪悪感を抱いてしまう気がします。
しかも、青木は5年も前に死亡しているのに、それを知らずに隠れていたというのも不憫です。最終的に、母親と再会して、救いのあるところが見れてよかったです。
ラスト、生存していた犯人グループである曽根の叔父と母親が、別々の場所で同じ主張、「社会に対する怒りの発露だった」と誇らしげに語るのに対し、阿久津と曽根が「勝手な理屈言ってんじゃねぇぞ」と喝破するシーンが最高にスッキリしました。