伝説の英雄たちの青春 「ロードス島伝説」の紹介

 こんにちは、榊原です。今日は、本の紹介です。水野 良さん著作の「ロードス島伝説」をご紹介します。基本的にネタバレはありませんが、本作の後日談に当たる「ロードス島戦記」1巻に触れる内容となっておりますので、ご了承ください。

目次

 ロードス島伝説について

 ロードス島伝説は、同じく水野さん著作のロードス島戦記のスピンオフ作品となります。ロードス島戦記は、呪われた島ロードスの中で、騎士に憧れて旅を始める青年「パーン」を主人公とするファンタジー小説です。

 ロードス島戦記は、1988年の作品であり、エルフ、ドワーフ、魔法、精霊など、ファンタジー小説の要素は大体抑えていると思います。

 本作はロードス島戦記の30年前という位置づけとなっており、ロードスを魔人王の手から救った6英雄の伝説として後世に語り継がれている物語です。

 ロードス島戦記の中では、魔人王の討伐という結末しか語られませんが、その始まりから終わりまでの過程を全て見せていくのが本作となります。

 あらすじ

 山岳のモス地方にある小国「スカード」の王子「ナシェル」は、父である王「ブルーク」の留守中の城を預かっていたが、気になる報告を受ける。魔人が現れ、ドワーフたちが住む同盟国「石の王国」を襲ったというのだ。

 急ぎ兵を連れて石の王国に向かうナシェルだが、道中で魔人と気絶した石の王国の国王である「フレーベ」を発見する。

 フレーベがいることから、石の王国が堕ちたことを悟ったナシェルは、王国に戻り、対策を検討する。まず、魔人と言うものの存在を知るべく行動を開始するナシェルだったが……という感じです。

 ストーリーについて

 ファンタジー系は、一時期コメディ要素が入りつつ、主人公が現代日本の知識や経験を活用して成り上がる異世界転生ものが流行りましたが、本作はコメディ的な雰囲気はほぼありません。人間と魔神という異種族の争いを主軸に、そこに生きる人間たちの葛藤や喜び、愛情などを描いています。

 主人公を始め、物語を構成する人間たちは信念に裏打ちされた能力ある者ばかりで、読み手である読者の予想を上回る問題解決方法などを見せてくれてワクワクします。

 戦闘描写も、雑魚戦闘から、ボス戦、集団でのぶつかり合いなど、ドラクエに代表されるRPGやファイアーエムブレムに代表される戦略シミュレーションを想起させる展開に胸が熱くなります。

 キャラクターの詳細については後述しますが、聖騎士「ファーン」、聖女「ニース」、賢者「ウォート」など、個性ある面々は見ていて面白い者たちばかりです。六人のうち、誰か一人くらいは推しのメンバーが出てくると思います。

 登場人物紹介

 ナシェル:スカードの王子。ウォートやベルドにも認められる才気に溢れた若者。

 本作は、主にナシェルの視点で語られますが、最初の方は正直個性に乏しい感じがしましたが、あることをきっかけに苦境に陥ってからは、持ち前の才覚で事態を打開していく姿が気持ちいです。

 ナシェルはモス地方を束ねる王族の血筋ではありますが、決して生まれの力ではなく、ナシェル自身の努力と行動によって道を切り開いていきます。

 性格も真っすぐな青年なので、好感を覚える読者が多いのではないでしょうか。他のキャラクターに比べて若干薄味のような気もしますが、他が特濃なので致し方ないのかもしれません。

 ファーン:ヴァリスの聖騎士。後のヴァリス国王。剣の実力も非常に高い戦士。

 ファーン自体は、真面目な戦士以上のキャラクターではないのですが、自由奔放な戦士「ベルド」と絡むと俄然面白くなってきます。この2人、ロードス島戦記の時代では宿敵としてぶつかり合うので、悪友ともいうべきやり取りを見ていると面白くも切なくなります。

 ベルド:スカードの騎士隊長として雇われている赤髪の傭兵。後の暗黒島「マーモ」の皇帝。

 闇を抱え、血が沸き立つ戦いを求めていますが、ナシェル、ファーン、ウォート等と穏やかな関係を構築できるあたり、かなり複雑な人物です。ベルドが強力な魔神将と何度も一騎打ちをしていくのは、この作品屈指の燃えポイントです。

 「もしも貴公と戦うようなことがあれば、戦の勝敗に関係なく、一騎打ちを申し込むだろうな」「その時が楽しみだな。魔神将より、楽しませてくれるだろうよ」というファーンとのやり取りは、後の世の激突を感じさせる名場面です。

 フラウス:ファリスの聖女と呼ばれる至高神「ファリス」の神官戦士。魔神の討伐中出会ったベルドに勇者の素質を感じ取り、共に旅をするようになる。

 常識人と思いきや、初対面の戦士を勇者候補認定して、旅の仲間としてついていくという相当なぶっ飛んだ人物。そういや、水野さんの別の著作である「魔法戦士リウイ」でも神からの天啓が降りたと言って主人公を勇者候補とする女がいましたが、そういうのが好きなのでしょうか?

 ドラクエでは、神官系は後衛で呪文中心と相場が決まっているのですが、この世界ではメイス(ハンマーみたいな武器)でガスガス殴り合うのも素敵。

 ウォート:スカードの客員魔法使い。後に最も深き迷宮を守る「荒野の賢者」。ナシェルの教育係を務める。

 やや斜に構えた物言いをし、人間の心理を読むことに長ける男なのですが、その実フラウスと並ぶほどの夢追い人というギャップがいいです。

 後の6英雄の中では、この人物が一般的な感覚に近いような気がします。ウォートも大概なのですが、他の人物たちがあまりに浮世離れしていて、ちょっと庶民感覚に近い苦労人です。

 人が持つ権力や金への欲を利用して、魔神たちへの対抗手段とする策略は中々にエグイものがありますが、利用できるものは自分すらも利用するという姿勢が最高過ぎます。

 ニース:「マーファの愛娘」と呼ばれる大地母神「マーファ」の司祭。後のマーファ教団最高司祭。

 信仰心に基づき人を癒す回復系です。あまりにも真っすぐすぎて、読んでいるこちらが居心地が悪くなりますが、何とカップリングの相手はウォート。やはりニヒルな毒男には癒し系美女だというのでしょうか。この作品、刊行は1994年ですが、分かっていらっしゃる配置です。

 最後に

 4巻(+後日談1巻)と読みやすい巻数ですし、何より完成度が素晴らしいです。オチには賛否両論あると思いますが、これは後の話に繋げるため仕方ないと理解しています。

 日本のファンタジーの傑作古典に、ぜひ触れてみてください。ライトノベルと言えば、ハルヒではなくて(これも古い?)、ロードス島シリーズです!

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ABOUT ME
榊原 豪
榊原 豪(さかきばら ごう)です。都内在住で、主にマンガ、映画、小説、アニメ等のエンターテイメントの情報を発信していきます。 楽しいこと、面白いことを探すのが好きですし、「何を『面白い』というのか?」という考察なども結構好きです。 よろしくお願いします。