ガンダムUCはここから始まった 本「川の深さは」について

 こんにちは、榊原です。今日は、本の紹介です。福井晴敏さん著作の小説「川の深さは」についてご紹介します。

目次

作家「福井晴敏」について

 福井さんは、本作は、〇〇賞に応募するも、最終で落選。別の作品「Twelve Y.O. 」で江戸川乱歩賞を受賞。その後も「亡国のイージス」、「終戦のローレライ」などでヒットし、どう二作は映画化もされています。

 「月に繭 地には果実」というタイトルでターンエーガンダムのノベライズも行ったことがあり、近年ではガンダムUCの原作を担当し、アニメ化が大ヒットしました。

 作品の傾向として、とにかく熱量と文章量が物凄いです。本作「川の深さは」はそうでもありませんが、亡国のイージス、終戦のローレライは二段組(一ページに二段)で上下巻で1000ページ越えの超大作となります。

 事細かく情景描写や、心理描写を行っていくため、どっぷりと世界観につたることができます。また、大体の作品において、「かつては優秀だったが、あることをきっかけに熱意を失った中年男性」と「非常に優秀ではあるものの、若さゆえの未熟さがある青年(少年)」がコンビを組みます。本作においても、もちろんそうです。

 本作の魅力

 ①ストーリー

 元は警察に努めていたけれど、警察社会に嫌気がさして、熱意無く日々を警備員として過ごしている桃山と、彼が警備するビルに隠れるために侵入した少年と少女が出会うところから物語は始まります。

 福井作品としては、情景や心情描写が割と薄めですが、その分テンポが良く、ぐいぐいと物語に引き込まれます。特に、日常を怠惰に過ごしていた桃山が、少年たちと出会うことによって、失われていたものを取り戻していくかのような、新しい何かが始まる予感を抱く心情が非常に魅力的に描かれています。

 この辺りって、社会人を経験した人だと、結構わかると思うんですよね。劇的なことがないにしても、いつのまにか、日常を機械のように過ごしてしまって、今日と同じ明日、明日と同じ明後日になってしまっているような。

 「それが何であっても、やることがあるっていうのはいいよ」という桃山の言葉は、ただ生きているだけになってしまっている日々を象徴するような言葉になっていると思います。

 桃山が、少年たちの出会いによって、熱を取り戻し、明らかに愚行と分かっている決断をするシーンは、非常に感動的なものになっています。

 ②登場人物

 元警察の桃山、少女を護るために命を懸ける少年が、親子のような、兄弟のような関係を築いていく過程が本作の大きな魅力になっています。

 少年が少女を護ることについて、「命なんて安いもんだ。特に俺のは」とうそぶくのに対し、「次にそれいったらただじゃおかねぇ」と少年を諫めるなど、少年の無鉄砲さと桃山の不器用な案じ方が現れています(この辺は、おそらくガンダムWの主人公「ヒイロ・ユイ」のオマージュでもありますが)。

 本作においては、他にも少年が守る少女や、少年のかつての上官など、言葉の一つ一つが印象に残る登場人物も出てくるのですが、概ねこの2人の関係性と心理描写に注力がされているので、割と薄めなのはちょっと残念です(全部濃く書くとテンポが悪くなるので、バランスを重視したのだと思います)。

 まとめ

 ガンダムUCの原作本を読んだ人で、文体が気にならなかった人は、絶対に買いの一作になっています。この作者にしては珍しく、さくっと文庫本一冊で読めますので、熱量のこもったオジサンと少年の冒険譚を、ぜひご覧ください。

 それでは、また!

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榊原 豪
榊原 豪(さかきばら ごう)です。都内在住で、主にマンガ、映画、小説、アニメ等のエンターテイメントの情報を発信していきます。 楽しいこと、面白いことを探すのが好きですし、「何を『面白い』というのか?」という考察なども結構好きです。 よろしくお願いします。