こんにちは、榊原です。昨日東京競馬場に行ってきました。案外人は少なく、また、思ったよりも若い客層で構成されていて驚きました。
競馬場内は清潔で、休めるところも多く、家族連れでも結構楽しめるところになっていました。友人2人と半日いて、1万円程度を消費しました。
残念ながら一度も当選しませんでしたし、府中はちょっと遠いので、もう行かないとは思いますが、悪くない経験だったと思います。友達の方は、5万スっていたようですが……賭け過ぎだよ。
それはそうと、今日は本の紹介です。飲茶さん著作の「史上最強の哲学入門」をご紹介します。飲茶さんについては、以前「正義の教室」と「最強のニーチェ」をご紹介していますので、そちらもお読みいただけると嬉しいです。
バキ×哲学入門=最強
史上最強の哲学入門
哲学入門として最上
真面目にふざけている
バキ分てんこ盛り
面白さ
読みやすさ
普遍性
おすすめ度
目次
凄まじい前書き
本作のコンセプトとしては、哲学の初心者に対して、哲学者とその思想内容を紹介していくというものになりますが、「今までの哲学入門書には、バキが足りない」という狂った結論に達しています。
バキというのは、グラップラー刃牙という、高校生でありながら、地下闘技場で無敵のチャンピオンとして君臨する範馬刃牙を主人公とした格闘マンガです。
近年は、ネットフリックスオリジナルアニメで死刑囚編が配信されたので、そちらで馴染みのある方もいらっしゃるかもしれないです。これがどう哲学と結びつくのかと疑問に思われる方も多いと思います。
本作は前書きで、バキの東京ドームの地下闘技場のパロディとして、次々と哲学者を紹介していく、パワーワードのオンパレードになっています。以下、その中から3つを抜粋します。
「神殺しは生きていた!更なる研鑽を積み人間狂気が甦った!超人!!ニーチェだァー!!」
「儲けたいからここまで来たッ!「見えざる手」の根拠、いっさい不明!アダム・スミスだ!!」
「デカカァァァァァいッ!!説明不要!!哲学界の大巨人アリストテレスだ!!」
もうこの3つを見るだけで、どれだけふざけていて頭が悪い(褒めてます)かご理解いただけると思います。面白いのは、単純にパロディだけでなく、それぞれの哲学者の特徴を短い言葉で、分かりやすく伝えているということです。
本作は、前書きの他にも、哲学者の名前で章立てがされていますが、章の最初のリード文に「ワーッ」という歓声が書かれている、マンガのパロディネタが盛り込まれているなど、哲学の入門書として、かなり異質な造りになっています(パロディの元ネタの一つに北斗の拳がありました。「指先一つでダウンさ」って、何人が分かるんだろう……リンク先30秒くらいのところです)。
色々と飲茶さんの遊びっぷりを紹介しましたが、それぞれの思想の内容については、かなり整理されており、読みやすく、ちゃんと読めば大まかな内容が頭に入るという作りになっています。
哲学の魅力をふんだんに生かし、しかも楽しみながら学べるという、飲茶さんならではの作品になっていると思います。
登場する哲学者
今まで紹介した飲茶さんの本は、ニーチェの思想に特化した内容だったり、正義というテーマに絞っての内容でしたが、本作は取り上げる思想や哲学者の幅広さが特徴の一つになっています。
カント、ヘーゲル、ハイデガー等の超メジャーどころは押さえてありますし、トマス・アクィナス、デューイなど、哲学について勉強したことがない人が聞くと「どなた?」と思うマイナーどころまで、31人にわたって登場します。
高校や公務員の教養試験がどこまでを範囲としているかはわかりませんが、本作は要点を押さえて、それぞれを短く解説しているため、試験対策の本で勉強をするより、よほど頭に入って実践的な気がします。試験向けに書いているわけではないので、使い方については、工夫がいるとは思いますが。
わかりやすさについて
上述しているところではありますが、それぞれの哲学者の思想などについて、簡潔に、分かりやすい言葉で説明しています。
本作の特徴の一つとして、思想の背景や前提知識、その思想が当時の人々にどう受け止められたか、どう変わっていったかまでも書いています。
これにより、ぶつ切りの思想を箇条書きに記載しているのではなく、世界の変遷やそれぞれの繋がりなどについても学べ、有機的な知識を得ることができるようになっています。
哲学自体の魅力について
やや大げさないいかたになりますが、生きる意味とは何か、努力する意味とは何か、存在とは何かという問いについて、考えるきっかけとなります。
普段、何も考えずに生活していると考えないような内容ばかりですが、本作を呼んでいると、31人もの哲学者がそのような、切実で、ある種中二的な香りが漂う考えを次から次へと提示してくるため、いつの間にか忘れていた問いを思い出させてくれます。
個人差もあると思いますが、どう生きるかというのは、誰もが直面するべき課題であるため、そのような重大な問いに向かい合う機会をくれるのは、得難い体験だと思います。
哲学書全てがこのような体験をくれるわけではなく、平易な文章で、時折コミカルな文体で哲学について学べる本作だからこその特色になっています。
イマイチなところ
それぞれの哲学者の主張などを短くまとめてはいますが、裏を返せば一人の思想に対する記述はどうしても薄くならざるを得ません。その点は、以前ご紹介した「最強のニーチェ」や「正義の教室」など、それぞれのテーマに特化した本に譲らざるを得ません。
この本で概要を掴んで、興味を持った内容については個別に掘り下げて勉強していくという使い方になるかと思います。あくまでも入門書ですしね。
終わりに
哲学というとっつき難く、複雑な内容を、これ以上ないほどわかりやすくかみ砕いて説明してくれる良書です。
一つ一つの項目が短いため、気が向いた時にペラペラとめくるもよし、気になっていた哲学者から勉強するもよし。哲学の魅力について触れるきっかけとして、ぜひ一度お読みいただけると嬉しいです。
それでは、また!