映画

男たちの泥臭い殺し合い 映画「ただ悪より救いたまえ」の紹介

 こんにちは、榊原です。今日は、映画の紹介です。12月24日より公開開始の韓国映画「ただ悪より救いたまえ」についてご紹介します。

目次

 あらすじ(映画.comより)

 凄腕の暗殺者インナムは引退前の最後の仕事として、日本のヤクザ・コレエダを殺害する。コレエダの義兄弟だった冷酷な殺し屋レイは復讐のためインナムを追い、関わった者たちを次々と手にかけていく。

 一方、インナムの元恋人は彼と別れた後にひそかに娘を産みタイで暮らしていたが、娘が誘拐され元恋人も殺されてしまう。

 初めて娘の存在を知ったインナムは、彼女を救うためタイへ急行。そしてレイもまた、インナムを追ってタイへとやって来る。2人の戦いは、タイの犯罪組織や警察も巻き込んだ壮大な抗争へと発展していく。

ただ悪より救いたまえ

韓国製ノワール映画

アクションが熱い

暴力描写有り

男の世界

4

一人で楽しめる

1

恋人と楽しめる

3

親子で楽しめる

3

おススメ度

 三幕構成

 第一幕:殺し屋インナムの引退

 ターニングポイント→インナムが元恋人の死を知る

 第二幕:インナムとレイの衝突

 ターニングポイント→インナムの娘の救出

 第三幕:決着

 スタッフについて

 監督は、「悲しき獣」「チェイサー」で脚本を務めたホン・ウォンチャンさんです。両方見ましたが、たしかに雰囲気が本作と似ています。全体的にへばりつくような陰湿なムードが漂う作品を作る人です。

 撮影監督は「パラサイト 半地下の家族」ホン・ギョンピョさんです。あんまりあの映画でカメラワークが凄いと思った覚えがないような気がしますが、本作では迫力あるアクションの絵が楽しませてくれます。

 ストーリーについて

 今作は、引退を決めた殺し屋インナムと、インナムの標的だったヤクザの弟レイのぶつかり合いを主軸にした物語です。

 インナムは成り行きから日本で殺し屋を営んでいましたが、大金を持っていても空虚に生きています。

 しかし、バンコクで元妻の死と娘の存在を知り、なりふり構わないやり方で捜査に動き出します。この「なりふり構わない」が度を越していて笑えます。

 とりあえず元妻の死に関わった連中は、問答無用で拷問と殺害を敢行。この拷問が、あまりにもサラリとやってくれて自然過ぎです。

 拷問と言うと、眉を顰める方がいるかもしれませんが、観客である我々は、死亡した元妻が、娘と暖かい関係を築いていたこと、娘が誘拐されて焦燥している姿をしっかりと見ていますので、全く同情しません。むしろどうしようもないクズどもをインナムが処理してくれて留飲が降りること請け合いです。

 レイもまた、インナムと同様に加減というものを知らない男。まずはインナムの雇い主であった男を殺害。次にインナムへの手掛かりを求めたところ、娘の誘拐犯を見つけたというガセネタを持ってきた奴らを全員殺害。

 更に娘の買い手だったバイヤーたちを邪魔だからと殺害。立ち塞がる者には容赦しないですし、立ち塞がらなくても邪魔ならぶち殺します。この、ある種似ている二人が出会った時の爆発が今作の最大の魅力で血を熱くしてくれます。

 アクションについて

 格闘戦では、インナムが訓練された人間のような動きで相手を殺していくのに対し、レイは相手を効率良く殺すための動きという印象を受けました。椅子や置物などで殴りかかったり、投げも使ったりとパワフルな動きを見せてくれます。

 途中から銃撃戦が展開されますが、こちらも「ヒート」を彷彿とさせる力の入ったものになっています。

 ただ、インナムは明らかにレイの掃射を避けきれない位置にいるのに大したダメージを負いませんし、レイはレイで乱入してくるタイ警察十人以上を一人で相手にしているのに、割と平気な顔で壊滅させます。

 あと、インナムの銃撃が上手すぎてちょっと笑ってしまいました。一人一撃でヘッドショット決めていきます。この辺りはむしろ胴体に二発ずつ入れた方がいいのではないでしょうか(頭部は的が小さいため外れやすい)。

 この辺りのリアリティーラインはちょっと気になりましたが、要するにこの物語は二人の男の殺し合いを見るための物であり、それを邪魔する人間の攻撃は当たらないということなのでしょう。

 狭い廊下での殴り合い有り、開けたところでの撃ち合い有りの見所が多いアクションだったと思います。

 登場人物

 インナム

主人公。空虚な殺し屋をしていたが、妻の死をきっかけに、バンコクへ行く。

 殺し屋稼業で溜めた金で引退後の生活を検討しているときよりも、言葉もロクに通じないバンコクを妻の死や娘について調べているときの方がよほど生き生きしています。

 結構スムースに暴力を行使する上に、本人は平気な顔をしているので「え?こんなことしてもいいの?」とこっちがハラハラします。

 ぶっきらぼうな返事が目立ちますが、他人に自分の考えや思いを伝えるのが苦手な人なのだと思います。

 レイ

インナムが引退前に殺したヤクザの弟。執拗にインナムを追う。

 国を離れようが、警察と鉢合わせになろうがお構いなしにぶっとばして、ぶっ殺す男。

 こんな人、目立ちすぎて絶対に殺し屋無理ですよ。正面から殺しに来るので、襲われる方もたまったものじゃないと思います。

 しまいには予告編に出て行く言葉、「殺し合う理由なんてもう忘れた」と手段が目的化する始末。

 この人にとっては、自分の全てをもってインナムを殺すことが目的となってしまったのでしょう。

 終わりに

 力と勢いが凄い映画です。どことなく漂う陰惨な空気も、ノワール的でとてもいいです。見所が二人のロクデナシの殺し合いではありますが、案外に暴力描写は凄惨なものがなく(レイは腹を割く男として知られてるので見せても良かったと思いますが)ので、グロ描写が苦手な人でも大丈夫だと思います。

 それでは、また!

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ABOUT ME
榊原 豪
榊原 豪(さかきばら ごう)です。都内在住で、主にマンガ、映画、小説、アニメ等のエンターテイメントの情報を発信していきます。 楽しいこと、面白いことを探すのが好きですし、「何を『面白い』というのか?」という考察なども結構好きです。 よろしくお願いします。